胃がんは現在、日本人のがん死亡者数では1位の肺がん、2位の大腸がんに次いで3位(国立がん研究センター「がん統計2022」より)だ。
50歳前後から、とくに男性で急に罹患率が高まる。自治体の胃がん検診も50歳以上を対象としているが、「胃カメラは50代のうちに一度は受けること」を平澤医師は強く勧める。
「がんの多くがそうであるように、胃がんでも早期には症状が出ません。これといって気になる症状がないという人でも、50歳を過ぎたら一度は胃カメラを受けておくといいと思います」(平澤医師)
バリウムとの違い、検診について
ところで、胃がんの検査といえばバリウム検査(胃X線検査)を思い浮かべる人もいるだろう。2016年には検査の選択肢に胃カメラも加わったものの、いまも多くの自治体の胃がん検査で行われている。
現在は、バリウム検査であれば40歳以上を対象に年1回、胃カメラの場合で50歳以上を対象に2年に1回の受診が推奨されている。50歳以上であれば、バリウム検査か胃カメラかの検査方法を住民自身で選べることが多い。
ちなみにバリウム検査とは、バリウム(造影剤)を飲んで発泡剤(炭酸)で胃を膨らませ、X線(レントゲン)を連続的に照射しながら撮影する検査だ。体位を変えながらレントゲン撮影することで、バリウムが粘膜の表面を滑り落ちていく様子を観察する。それによって、食道、胃、十二指腸のポリープ、隆起、陥凹などの有無を捉えることができ、潰瘍やがんの存在もわかる。
平澤医師は胃がん検査ではバリウム検査ではなく、胃カメラを推奨する。バリウム検査では、バリウムを胃粘膜表面に付着させて凹凸を見分けるため、早期がんの小さな凸凹は見つけにくい。さらに、胃内に胃液などの液体が多い場合には、バリウムが薄まり、検査の精度が低くなってしまうという。
「バリウム検査でもある程度、早期がんは見つかりますが、2センチ以上の大きさでないと検出しにくい。2センチぐらいだと早期がんの場合もありますが、進行がんで見つかるケースもあります」(平澤医師)
これに対し、胃カメラであればわずか数ミリという“超早期の胃がん”も見つけることができ、治療も内視鏡ですむ。早期の胃がんの生存率は高く、5年生存率は96.7% とされている。
さらに胃カメラは近年、機能にAI(人工知能)技術が加わり、進化を続けている。
「画像にがんやポリープなどが確認されるとアラートが出る機能や、ポリープとがんを見分けることのできる機能の付いたAIシステムも出てきています。こうした機能により、超早期のがんが発見しやすくなりつつあります」(平澤医師)
ただ、AIはあくまでも医師のサポートであり、最終的な診断は医師が行うものだ。胃カメラでいかに早期のうちにがんを発見できるかは医師の腕にかかっている。
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