放射線は人体にどう影響するか、放射線による健康被害とは何か

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


 このしきい値は、一度にこの線量の放射線を受けた場合を想定したもの。仮に、一生かけて10万マイクロシーベルトの放射線に被曝したとしても問題はない。一生80年として1年当たり1250マイクロシーベルト。1カ月当たり104マイクロシーベルトの放射線に被曝し続けたとしても、影響は出ないはずだ。損傷した細胞は次々と修復されるうえ、放射性物質は時間の経過に伴い、放射線レベルが低下していくからだ。

放射線で発がんリスク、低線量ではまだ不明

低い線量の放射線なら、被曝しても損傷したDNAは正しく修復されるので問題はない。が、ほんのわずかな確率で、間違って修復されてしまうことがある。正しい情報が伝えられず、細胞に突然変異を引き起こす。そこで懸念されるのが、発がんだ。

放射線被曝と発がんの関連性については、広島、長崎の原爆被曝者に対して行われたフォロー調査の結果で説明できる。そこで明らかになったのは、がんは被曝後の潜伏期を経て発病するということだ。

白血病では、被曝後2~3年で発生率が増加し始め、6~7年でピークとなり、その後減少する。一方、固形がん(胃、肺、大腸など血液以外のがん)は被曝後数年~数十年から発生率が上がり始め、年齢とともに増加し続ける。

また、がんについては、前述の確定的影響と異なり、しきい値がなく、少量の被曝でも確率的にゼロにはならないと仮定されている。そのため、放射線防護の観点から「確率的影響」と呼ばれている。

「ただし、本当にしきい値がないのか、どんなに少量の被曝でも発がんは起こりうるのか、ということについて、科学的に明らかにされているわけではない」と、大阪府立大学先端科学イノベーションセンター・放射線研究センターの児玉靖司教授は言う。原爆被曝者の調査で、放射線による発がんリスクが統計学的に有意に高いといえるのは、10万マイクロシーベルト以上の被曝線量においてだ。それ以下の線量については、慎重を期した仮定にすぎない。「10万マイクロシーベルト以下について統計学的有意差を示すには、さらに数万人を対象とする調査が必要だが、現実的に不可能」と児玉教授は説明する。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事