飲食店が「脱マスク」に踏み切れない3つの理由 コロナ5類へ移行でもなかなか踏み出せない

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誰も責任を取らない中、経営判断を迫られたら企業としては感染症法という法律を遵守しながら、現場ではある程度の感染対策を続けていくのが妥当ではないだろうか。とある外食団体のトップも「コロナ禍では人々がマスクをし、飲食店への来店を控えるようになりました。それが現在は、マスクをしながら飲食店へ来店してくれるようになっています。それだけでも大きな一歩に違いありません」と話す。

脱マスクにつながりそうな2つのきっかけ

それでは今後、外食業界で脱マスクの機運は高まるのだろうか。

そのきっかけは2つあると考えている。まずはインバウンドだ。2023年3月には2019年同月比65.8%の181万7500人の訪日客が来るなど、インバウンド需要が急速に回復している。

コロナ禍前、国別で観光客が多かったのは中国だった。現在、水際対策の影響などを受けて、中国からの観光客はほとんどいないが、今後、急速に戻ってくる可能性がある。先ほど触れたように、インバウンドは外食業界の売り上げを支える大きな起爆剤だ。そこからのニーズが高まれば脱マスクへ動いていくだろう。

次に人材の獲得だ。2020年に施行された「改正健康増進法」の影響で、飲食店では基本的に煙草を吸うことができなくなった。しかし、2014年8月1日にマクドナルドが全店舗で屋内禁煙を発表したとき、失敗するという声が多かった。

また、1996年に日本に上陸したスターバックスも当初は分煙の店舗もあったが、後に屋内に関しては完全禁煙を実現している。今回、スターバックスもマクドナルドも、従業員のマスク対応は任意とした。都心にある店舗では素顔で接客するスタッフの姿も目立った。

現在、外食業界は人材不足だ。ゴールデンウィークには、「吉野家」が人手不足で休業を余儀なくされたことが大きなニュースとなった。今後、せっかく飲食店で働くのなら素顔で働きたいという働き手が増えることで、脱マスクの流れが加速する可能性も大いにあるだろう。

もとの日常が戻ってくるのに、まだしばらく時間がかかりそうだが、そこへ向けて着実に歩を進めているのも事実である。しかも時代に合わせてダイナミックにビジネスモデルを変え、大きな成果を上げる企業も続々と出てきている。素顔での接客が主流になったとき、インバウンドなどの回復を鑑みれば、1997年に記録したピーク時の市場規模に手が届くところまで来ていてもおかしくない。

三輪 大輔 フードジャーナリスト

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みわだいすけ / Daisuke Miwa

1982年生まれ、福岡県出身。法政大学卒業後、医療関係の出版社などを経て2014年に独立。外食を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。「ガイアの夜明け」に出演するなどフードジャーナリストとしての活動の幅を広げ、これまでインタビューした経営者の数は 500 名以上、外食だけでも200名近くに及ぶ。

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