飲食店が「脱マスク」に踏み切れない3つの理由 コロナ5類へ移行でもなかなか踏み出せない
3. 外食の市場環境の変化
2023年度の決算で、多くの企業が売り上げをV字回復させている。「九州熱中屋」などを展開するDDホールディングスや、「磯丸水産」などを運営するクリエイト・レストランツ・ホールディングスといった、居酒屋業態を持つ企業も売り上げを回復させており、ようやくコロナ禍の影響から脱しつつある。
しかし、コロナ禍で人々の外食の絶対数が減っているのは事実だ。実際、2回転目以降に課題を持つ飲食店は少なくない。売り上げを急回復させている企業も、既存業態だけでコロナ禍前の売り上げを超えるのは難しいと判断し、時代に合わせた新規ブランドを開発している。
加えて、人件費と原材料費の高騰などを受けて、多くの飲食店が利益を出しづらい状況となっている。売り上げの絶対額が上がらないにもかかわらずコストが高騰し、さらには融資の返済も始まっているのでコロナ禍前と比べて競争が激化しているといっても過言ではない。その中で、集客に響く可能性のあるマスク着用をはじめとした感染対策を撤廃するには勇気が必要だ。
回復の勢いをそぎたくないという心理
コロナ禍が起こる前、外食業界はインバウンドなどの影響もあり、売り上げは好調だった。そもそも外食業界の市場規模は1997年の29兆円をピークに減少を続け、東日本大震災があった2011年には22兆円までシュリンクした。
しかし、そこから堅調なインバウンド需要などもあり、2019年には26兆円まで回復。2020年のオリンピックに向けて、さらなる市場拡大が期待されていた。
その矢先、コロナ禍が外食業界を襲う。緊急事態宣言の発出などにより、思うように営業ができなくなった結果、2020年には18兆円にまで市場規模がシュリンクしている。そこからの回復の糸口が見え出している今、勢いをそぎたくないという心理が働いてもおかしくない。
コロナ禍で、飲食店の経営者は難しい舵取りを求められ、大きな責任を引き受けてきた。時短協力金が出るかわからなかった1回目の緊急事態宣言の発出時、キャッシュを確保するため個人で数億円の融資を受けている飲食経営者も多い。
一方で、コロナ禍に実施された緊急事態宣言はもちろん、アクリル板や飛沫防止シールド、消毒用アルコールといった感染対策に、どの程度効果があったのかはまだ検証されていない。また、5類の移行に合わせて、政府や分科会からコロナ禍の終息宣言もなかった。
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