「5年生のこの時期の金額としては安かったと思いますけど、金額に見合った指導ですらなかったと感じています」(祐里子さん)
凪さんとも相談し、ビザビへの転塾を決めた。転塾後の通塾は週2日のみ。長期休暇にはそれなりにコマ数を増やしたものの、6年生も学期中はコマ数を増やさずに通した。
塾のない日は自宅で学習していたが、机に向かうのは1時間、多い日で2時間程度。もちろん、習い事のダンスのレッスンも続けていた。
志望校選びで大事にしたのは「何ができる学校か」
塾代は少し上がって月に5万円から6万円、夏期講習も12万円ほどかかった。塾なしの受験に比べると高く感じる値段だが、大手集団指導塾と個別指導を組み合わせて上位校を目指す家庭などと比べれば低い金額だ。
そんな武田家が志望校選びで大事にしたのは「何ができる学校か」ということだった。模試で出た偏差値は参考にしつつもそこに縛られない選択をしたかったのだと振り返る。
「これからの時代、平均的にできる子よりも、突出したなにかがある子のほうが生きていきやすくなると思うんです。名門大学を出ていることは就職という意味では有利かもしれませんが、大学の名前よりも、〝私は〇〇ができます〟ということのほうが圧倒的に長く食べていける時代になる気がしています」
個性豊かなファッション業界で生きる母祐里子さんは、勝負できるなにかがなければ生き残れない厳しい世の中を見てきている。だからこその視点だ。また、自身の経験からも早くに世界を見てほしいという思いもあり、優れた英語教育と留学チャンスのある学校ということに軸が決まった。
一方、凪さんの希望はダンス部があることと、女子でもパンツスタイルの制服が着られること。あまりスカートが好きではない凪さんは、制服でスカートを強要されるのは嫌だと思っていたからだ。はじめに見学したのは起業家教育も盛んな品川女子学院、通称品女(しなじょ)だ。
「ここ、いいなぁ。入りたいかも」
パンツスタイルの制服はないものの、学校での説明会に参加した凪さんはとても気に入った様子だった。だが、偏差値が届いていない。凪さんが受けていたのは首都圏模試。国語は50半ばをキープしていたが、算数は40台後半だった。首都模試偏差値60超えの品女を目指すには開きがあった。
「ここに入るにはもうちょっと勉強する時間を増やさないと難しいよ~」
祐里子さんが学校の偏差値と共にこう伝えると、
「あぁ、ムリだねじぁあ」
凪さんはあっさりと諦めた。
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