「出生率が低下しても人口増」のカギは分け方 外国人人口の増加で総人口の減少が抑えられる

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今回の推計では、高齢化率は、2050年には37.1%(前回推計では37.7%)、参考推計である2100年には40.0%(前回推計では38.8%)となっている。高齢化率は、2070年頃までは前回推計よりも低くなると見込まれる一方、それ以降はむしろ高まると見込まれている。

というのも、足元の高齢化率は、前回推計よりも少し低いというのが実態である。2020年の高齢化率は、前回推計では29.2%(65歳以上人口は3619万人)と見込まれていたが、実際(国勢調査)には28.6%(65歳以上人口は3603万人)だった。

その差は、その後の高齢化率の推移にも影響する。高齢化率は、予見できない形で突然大きく上昇することはない。だから、2020年の高齢化率が少し低かったことから、その後の推移でも少し低くなる効果が残るとみられる。

年金財政はどうなる

65歳以上人口でみてこうした推移となると、年金の財政検証には次のような影響が及ぶと考えられる。

高齢化率が2070年頃までは前回推計よりも少し低くなり、かつそれだけ64歳以下人口の比率が少し高まるということだから、年金の給付財源の確保はそれだけ容易になるといえる。しかし、2070年以降は逆に前回推計よりも高くなるから、この時期以降の年金財政の収支はより厳しくなる。

しかも、前掲のように2100年頃には前回推計よりも高齢化率がかなり高まる。おおむね100年間を見渡した形で年金財政を検証するわけだから、検証する期間後半の高齢化率の上昇が、検証結果全体にどのように効いてくるかが、今後注目されるところとなろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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