長生きする地域の人の「酒の飲み方」意外な共通点 赤ワインに含まれるポリフェノールの効果は?

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もうひとつの成分、ポリフェノールの効果は、抗酸化作用です。

私たち人類をはじめとして、生物が生きていくために絶対必要な酸素には重大な副作用があります。酸素の一部が体内に入ると、活性酸素という有害物質に変化します。この物質は血管の動脈を硬化させたり、細胞をがん化させる作用があるのです。

この活性酸素を無害な物質に変える効果をもつのがポリフェノールなのです。ポリフェノールは植物性色素の一種で、地球上のほとんどすべての植物に含まれています。

その種類は多く、5000種以上あると言われ、食物の苦みや渋みの成分にもなっています。なかでも、ポリフェノールが最も多く含まれている食品は、黒ブドウから作られる赤ワインです。その他コーヒー、緑茶、紅茶、ブルーベリー、黒豆、ゴマ、ナスなどにも広く含まれています。

このポリフェノールが含まれる赤ワインを飲むことによって、活性酸素を無害化し、体の動脈硬化を防ぎ、がんの発生を抑制する効果が期待できるのです。

赤ワインを愛飲する人々が健康寿命を延ばしている事実が、その効能を雄弁に物語っていると言えるのではないでしょうか。

沖縄の人の長寿を支えてきたもの

世界のブルーゾーンに、東洋では日本の沖縄が選ばれています。

沖縄に長寿者が多いことは、すでに何十年も前から欧米の学者が注目していて、実際に研究者が調査に訪れたこともあります。

その当時から注目されているのが、食品では豚肉、ゴーヤ、豆腐、昆布、だったようです。

沖縄では、ゴーヤを使った「ゴーヤチャンプルー」が日常的に料理の一品として食卓に並びますが、この肉、大豆、野菜のバランスのとれた料理が、沖縄の人の健康長寿を支えてきたと、調査は結論づけたようです。

加えて、沖縄の代表的なアルコール飲料である泡盛にも、世界の多くの学者は深い関心を寄せています。

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泡盛は、タイ米に麹の一種である黒麹を加えて発酵させた蒸留酒です。アルコール度数は30度前後。

日本人が常用している焼酎は、20~25度前後、清酒は約22度、赤ワインの度数は12~16度ですから、それに比べるとかなり強いお酒と言えるでしょう。

近年フランスでは、日本酒の人気が高まり、その販売実績も右肩上がりで上昇しています。

2022年10月、パリでヨーロッパ最大級の日本酒の見本市が開かれ400種以上の日本酒が出品されました。3日間で5000人もの人が来場したそうです。

ワインと同じように、日本酒が醸造酒であることにフランス人は親しみを覚えるようで、日本酒をフランス料理にとり入れようと、さまざまな試みがなされているといいます。

泡盛についても好奇心を募らせている人が少なくないようで、泡盛の特徴である、芳醇な香りや独特な甘みに関心を寄せるソムリエたちの舌を驚かせています。

やがて、泡盛や日本酒が、フランス料理とともに食卓に並ぶ日が来るかもしれません。

志賀 貢 医学博士、臨床医

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しが みつぐ / Mitsugu Shiga

1935年、北海道生まれ。医学博士。昭和大学医学部、同大学院博士課程修了後、臨床医として約50年にわたって診療を行う傍ら、文筆活動においても『医者のないしょ話』(角川文庫)をはじめとする小説やエッセイなど著書多数。また、美空ひばり「美幌峠」「恋港」などの作詞も手掛け、北海道の屈斜路湖畔を望む美幌峠には歌碑が建立されている。

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