スープストック「離乳食炎上」への対応が秀逸な訳 変化を迫られる企業の切実な事情も見えてきた

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この2つの記事から見えてくるのは、スープストックトーキョーは創業当初から「ひとりで来店する女性」をターゲットとしていたということ。そして、スープを介して、彼女たちの共感を得ようとしてきたということだ。

そう考えると、「怒りの導火線」に火をつけたのは、スープストックトーキョーに共感してきた「ひとりで来店する女性」の「裏切られた」という想いだったのかもしれない。

店から足が遠のいた、かつての「ロイヤルカスタマー」へ

さて、もう一歩踏み込んで考えてみたい。それは「なぜ、スープストックトーキョーは創業当初に「ひとりで来店する女性」に絞っていた顧客像を、「離乳食を求める子ども連れ」にまで広げる施策を打ち出してきたのか」という点だ。

スープストックトーキョーは上場企業ではないので、有価証券報告書などで経営状態を公開する義務を負っていない。それゆえ官報などで公開されている断片的な情報を紡ぎながら、考えていきたい。

スープストックトーキョーの年商は約90億円だという。直近の利益は官報によると、1億8000万円余り。前の期はコロナ禍の影響もあってか、赤字となっている。

スープストックトーキョー
スープストックセット税込み1090円。Sスープが2つと、ご飯かパンが選択できる。写真はご飯少なめで、1070円だった(編集部撮影)

客単価はどうか。セットメニューはいずれも1,000円を超えるなど、スープストックトーキョーの客単価は外食チェーンとしては高いほうだろう。スープストックトーキョー同様、外食チェーンとしては高価格帯のメニューを提供している「CoCo壱番屋」を見ると、純利益率は6%を超え、コロナ禍の時期でも赤字には陥っていない。

つまり、スープストックトーキョーは経営基盤を強化する必要があるということではないか。

(出所:Soup Stock Tokyo公式サイト)

顧客層拡大を目指す理由を考えるうえで、もうひとつの材料がある。それは今回の「離乳食の無料提供」を告げるプレスリリースだ。

お客さまのライフステージが変わり、ご家族やお子さまと一緒にご来店いただく方も増えてきました。Soup Stock Tokyoとしてお子さまの成長を一緒に見届けることができればという思い、そしてお父さんやお母さんと一緒に食事の時間を楽しんでいただきたいという思いから、一部の店舗にて離乳食(後期)の無料提供を開始いたしました。
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