世界で、ポリオは1988年には125カ国35万人に蔓延していたものの、2014年には3カ国、413人にまで減少、過去26年間で99%も減少しました。
日本でも1960年代までポリオは大流行をしていました。1962年からワクチンが普及したお陰で、流行はおさまり、1980年を最後に、野生の(ワクチンによらない)ポリオウイルスによる新たな患者は出ていません。
残りあと、1%です。でも、この1%を0%にするのがとても難しい。なぜかといえば、前回お話した通り、ポリオは、単なる医療課題ではないからです。
ポリオが常在している3カ国
今でもポリオが常在している国は、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリアの3カ国です。これら3カ国では、紛争や貧困といった政治・経済・社会的なことが原因となって、ワクチン接種をすることがとても難しいのです。
パキスタン議員の方々とお会いする機会がありました。そのとき、議員のひとりが私たちに、パキスタンでは、イスラム武装勢力が、ポリオワクチン接種活動に従事する人々を殺害するといった妨害活動が続いている、と話して下さいました。なぜなら、2011年に国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者が米軍の急襲によって殺害されたときに、米軍が予防接種だと偽って極秘調査を行い、ビンラディン容疑者の居場所を特定したとされているからです。
また、ナイジェリアでは、以前、一部の宗教指導者が、ポリオワクチンが不妊の原因になっていると主張していました。それが原因で、子供にポリオワクチンを接種させない両親が、いまだにいます。
武装勢力の妨害や宗教的指導者の科学的根拠に基づかない主張によって、ワクチン接種ができない。その結果、本来ワクチンで予防できたはずのポリオの感染が、拡大してしまう。
昨年11月にも、パキスタン予防接種をしていたスタッフ4人が、予防接種キャンペーン中止を訴えるバイクに乗った男性2人組に殺害されるという痛ましい事件がおきました。
これらの例でも明らかなように、ポリオという病気を根絶するためには、停戦交渉や宗教指導者との対話など、医療という枠組みを超えた、政治・外交・社会的働きかけが必要なのです。
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