「サバ・サケも高騰」日本人が魚を食べなくなる日 日本の食卓に迫る、買い負けと漁獲量減の深刻

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2つ目は、日本近海での漁獲量減少だ。「国内の水域では、海水温上昇などに起因して水揚げ量が明らかに減っている。アジ、サバ、サンマなどの大衆魚が代表例」(中央魚類の伊藤社長)。そのうえで「ブリは富山県の氷見市、金沢市が有名だったが今では北海道が一大産地になっている」と水揚げ地の異変を語る。

特に深刻なのはサンマで、4年連続で漁獲量が過去最低を記録している。水産研究・教育機構によると、これまで日本沿岸に近づいていたサンマが2010年頃から急に沖合へとどまるようになったという。冷たい親潮が弱化したのに伴い道東・三陸沖の水温が上昇し、さらに海洋環境の変化でプランクトンが減少したことなどが原因とみられる。

地球環境だけでなく、人為的な原因があるとの見方もある。「日本近海での水産資源の枯渇については資源管理の甘さも要因。サバが不漁になったのは乱獲の影響も大きい」(極洋の井上社長)。

今後も魚価が下がる見込みは薄い。前出の水産大手幹部は「春先から仕入れシーズンが始まるが、1ドル130円程度の円安基調のため輸入価格は下がらない」と語る。

極洋の井上社長も「足元はカニやチリギン(チリ養殖の銀鮭)などの価格が崩れているが、あくまで相場のあや。これからコロナ禍で眠っていた中国の需要も本格的に戻ってくる」と予想する。国産の水産物についても「漁獲量が急激に回復することは考えにくい」(豊洲市場関係者)と期待薄だ。

日本のサンマ漁獲枠は青天井

厳しい環境下で業界が取り組むのが、水産資源の有効活用と管理保全だ。「小型で知名度が低く、輸送コストに見合わないという理由で捨てられている魚は少なくない。スーパーに並ばないような魚種も優良なタンパク源で、流通に乗せる取り組みが必要」。日本水産学会の東海正会長は市場に出回らない「未利用魚」の利活用を提案する。

資源管理については4月24日、水産庁がサンマ漁獲量の上限を前年比24%減の約11.8万トンにする方針を決定した。しかし前年のサンマ水揚げ量は約1.8万トンであり、実質的に青天井。日本ではサンマ以外でも漁獲枠が設けられているが、対象魚種が少ないうえに漁獲枠が実態に即していないのが実情だ。

「欧州ではマグロが資源回復しているしサバも獲れている。日本も見習ってIQ(漁獲枠を漁業者または漁船ごとに配分する制度)を実施するなど、手立てを考える必要がある」(極洋の井上社長)

世界での買い負けと漁獲量の減少という二重苦に、日本はどう対応するのか。対策を講じなければ、魚は手の届かない存在へと遠のくばかりだ。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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