「サバ・サケも高騰」日本人が魚を食べなくなる日 日本の食卓に迫る、買い負けと漁獲量減の深刻

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日本近海ではサバの水揚げ量が減少している。世界的な魚価高も深刻だ(xhiiiix/PIXTA)

サバにマグロにサーモンまで――。魚の価格が高止まりしている。3月に豊洲市場(東京都中央卸売市場)で取引されたサバの平均価格は1キログラム584円と、1年前より6割以上も高騰した。国産マグロは同4372円と36.3%増へ値上がりしている。

回転ずしのすしネタなどに使われるノルウェーのアトランティックサーモンは、3月の輸入価格が1キログラム2000円近くまで上昇した。「キロ1000円を上回ると需給が調整され自然に価格が下がっていくことが多かったが、1年半前に1000円を超えてから落ちる気配がない」(水産大手担当者)。まさに異常な魚価高が続いている。

「1皿100円」が主流だった回転ずし業界では、スシローやくら寿司が値上げに踏み切った。水産業界でも大手3社のマルハニチロ、ニッスイ、極洋を中心にサバなどの缶詰や水産加工品が値上げされている。日本の食卓に欠かせない魚をめぐり、2つの大きな潮流が起きている。

世界に根付いた「すし文化」

1つ目は、輸入水産物の「買い負け」だ。欧米では健康志向で魚食が広まり、アジア圏でも経済成長に伴い動物性タンパク質の需要が高まっている。さらに「日本のすし文化が各地で根付き、すしネタを中心に引き合いが強い」(水産卸大手・中央魚類の伊藤晴彦社長)。

日本では嗜好の変化や調理の手軽さで肉の消費が増えて「魚離れ」が顕著だが、海外では魚の需要が伸び盛りとなっている。

例えばメロという魚種は、かつて「銀ムツ」の通称で食べられてきた。しかし「中国に買い負けしている。彼らは多少の高値でも気にせず、部位をえり好みせずに一匹丸ごと仕入れていく」(水産大手幹部)。かつて安価だったメロは、百貨店で並ぶような高級魚になってしまった。

魚価高はデータからも明らかだ。日本は2006年に水産物を約315万トン輸入していたが、2021年は220万トンと3割以上も落ち込んでいる。反面、輸入金額はコロナ禍などで2020年は落ち込んだものの、上昇トレンドで推移している(財務省「貿易統計」)。

極洋の井上誠社長も「われわれは30年間、デフレにどっぷり浸かりすぎた。日本の食生活を守るためにも、今後はインフレの中で勝負していくという考え方へ転換しなければならない」と危機感をあらわにする。

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