年齢を重ねながらもチャーミングで、今も恋愛をテーマに歌い続けている。メディアに出演すれば、気さくで面白いトークもする。
そんなお茶の間の人気者的な印象からはイメージしにくいが、aikoは、そこらのロックバンドよりも、ストイックなライヴアーティストでもある。
彼女のライヴツアーは本数も多く、ボリューム感もあるが、毎回、何が起こるかわからない。aiko本人の意思で、ツアー半ばに、突然、セットリストを変えたり、その日に訪れた観客からその場で募ったキーワードを使って、即興で弾き語り曲を作って歌ったりすることも。ライヴをより新鮮で面白いものにしようと、aikoは自らに負荷をかけて、全力で挑み、周囲も観客も巻き込み熱狂を高めていく。
aikoには長らくの熱烈なファンが多いことで知られているが、彼女のことを尊敬する後輩ミュージシャンもあまたいる。その理由は、卓越したソングライティング力や歌唱力なども当然あるが、ライヴの力も大きいのではないか。それほどに、彼女は毎回、一回性の高い感動的なライヴを見せてくれる。
「ライヴは、慣れが一番良くないです。今日という日は一回しかないし、何が起こるかわからないのが人生じゃないですか。ライヴはそれを味わわせてくれるもんだと思うんです。
だから、いろんなことを実験的に試して、みんなであたふたするのが好き(笑)。一瞬たりとも油断したくないし、みんなにも油断しないでほしくて。お客さんやバンドメンバーはもちろん、照明さんにも、いきなりライトつけてとかお願いして驚かせてしまう。
毎回、全力でやっているから、ダメな時はどん底まで落ち込みますけど。40代になっても非日常のような日々の中で、いろんな感情を味わっています」
なぜ、そこまで音楽を愛し、一途に身も心も捧げられるのだろう。単純には解明できそうもないが、理由を1つ挙げるとすれば、その複雑な生い立ちにあることは、彼女自身も自覚している。
寂しさを徹底的に味わい、内面世界が育った
aikoは1975年11月22日、大阪府で、飲食店を経営する父と看護師の母のもとに生まれた。一人っ子だった彼女は、周囲の大人の愛を一身に浴びて育つ。
転機となったのは、小学校4年生の時。父親と母親が別れ、母親が家を出ていったこと。「どちらの親にもつかない」と宣言したaikoは、高校を卒業するまでの8年間、親戚の家に預けられることになる。
夜間に飲食店を経営していた父は、毎日のようにaikoに会いにきてくれたが、思春期を迎えるとさまざまな葛藤を抱えるように。
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