稼ぎまくる営業が作る「資料の色」の意外な共通点 スライドの文字数は1枚につき100文字前後

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95%セールスは、目立たせようとして赤や黄を使う頻度が多いのですが、印象に残りやすいのは「白抜き文字」のほうなのです。

テレビの情報番組などを注意深く見ていると、出てくるテロップの多くは白抜き文字であることに気づきます。視聴数が多いユーチューブ動画のサムネイルやテロップも白抜き文字が多いです。読みやすく、頭に残りやすい視覚効果を狙ってのことでしょう。

提案資料や社内稟議資料、企画書など相手を動かすことに成功した資料は、相対的にシンプルなものが多かったです。見栄えよりも内容に注力し、重要なことに絞って情報を記載し、相手に伝わってOKと言わせることができれば成功です。

スライドの文字数は1枚につきどのくらい?

5%セールスが作成した成功資料の多くも、スライドの文字数は1枚につき100文字前後、色数は(文字色を除く)2色以内に抑えられていました。画像・アイコンはさらに少なく、対面プレゼンの際は4個以内、オンラインプレゼンでは2個以内に抑えているものが多かったのです。

5%セールスは、資料においても相手を起点に作成していました。脳を疲れさせずに重要な情報が伝わるように工夫をしていたのです。

さらに、5%セールスは「相手にメモをとらせたい言葉を事前に決めている」と言っていました。

思いどおりに相手を動かすことをコミュニケーションの目的と捉えている5%セールスは、重要なポイントにフォーカスしてもらうように、情報を絞って、視覚で誘導しているそうです。

説明後の行動を誘発するように、記憶に残してほしいことを事前に決めて、それをメモにとってもらうように、資料のデザインと説明方法を調整していたのです。

■5%セールスはあえて「アナログツール」を活用する

5%セールスは、顧客の意見をホワイトボードに書き出したり、手帳にメモをとったりしています。

ある通信業の5%セールスは、在宅勤務でのオンライン商談で黒板を使ったそうです。3千円でネット購入した黒板シートを壁に立てかけ、白いチョークで図を描いて説明したといいます。

黒板を使ってオンラインプレゼンするセールスが少ないことを十分に理解したうえで、“あえて”それを活用して、相手の印象に残すことに成功したわけです。

一見、手帳や黒板などのアナログツールは、持ち運びや記録などの点で効率が悪いように見えます。しかし、何度も見返すことができるメリットがありますし、また相手の印象に残す目的であれば、十分に効果があると考えているそうです。

『AI分析でわかった トップ5%セールスの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ITが得意でない人は、世の中にまだまだいます。

テクノロジーをバリバリ使うことでドライな印象を持たれてしまわないよう、5%セールスは、相手の状況によってアナログツールを使うようにしているそうです。商談相手にあえてアナログツールを使っているところを見せると言う人もいました。

ただしアナログツールだけに頼っていては作業効率が下がるため、5%セールスは、相手との関係性や環境によってアナログツールとデジタルツールを使い分けているのです。

また5%セールスは、議論が白熱したり双方の意見が衝突したりしたときは、状況を冷静に捉えるために、ホワイトボードや黒板を使って情報を整理していることがわかりました。

こうした情報の見える化によって相手を落ち着かせ、感情の衝突から回避して、論理的なすり合わせに誘導していたのです。

越川 慎司 クロスリバー代表取締役

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こしかわしんじ / Sinji Koshikawa

通信会社、ITベンチャーの起業などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者などを歴任。2017年に株式会社クロスリバーを創業。ムダ取りコンサルタントとして800社以上、17万人を超えるビジネスパーソンの効率アップを支援。日常業務にひそむ「名もなきムダ仕事」の撲滅に注力する。「株式会社クロスリバー」では、メンバー全員が週休3日・週30時間労働を継続。著書に『仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?』(アスコム)ほか多数。

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