テレ東の新人局員が叩き込まれる「制作の真髄」 低予算だからこそロケで局員を徹底的に鍛える

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『出没!アド街ック天国』では、タレントが食レポをすることはほとんどありません。お金がかかるからです。関東を中心にありとあらゆる街を歩いて「街情報の専門家」と化したスタッフが、「自分の足で稼いできた情報の鮮度」だけで勝負しています。この番組の「料理のブツ撮り」は、徹底的に美味しく見えることにこだわっていて、そのクオリティの高さは業界内では有名です。

「志は高く、カメラは低く」……伝説の番組『ギルガメッシュないと』の初代プロデューサーの名言で、テレ東の社員なら誰もが知っている言葉だそうです。

もともとは「女性はローアングルで撮影したほうがセクシーだ」という意味だったのですが、いまテレ東では新人たちに、「取材先に対しては、いつでもフラットに目線を低くして臨まねばならない」という意味合いで、この言葉を教えているそうです。

テレビ東京の人たちは「ロケ至上主義」だからなのか、とても人格的に温厚な、いい人が多いと感じます。

テレビ東京はなぜオンリーワンなのか

腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察
『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そしてテレ東には、「他局のほうが上手にできることは他局に任せる」という文化があると思います。ずいぶん前ですが「ワイドショーは任せた。バラエティは任せろ」というテレ東の広告を見たことがあります。「どのチャンネルを見ても同じ」ではテレビはつまらないですよね。

自分たちができること、やるべきことをよく理解していて、自分たちの個性を大切に育ててきた社風が、テレビ東京をオンリーワンにしているのです。

テレビ東京だけでなく、ほかの民放各局やNHKにも、ぜひ「自分たちにしかできないこと」と「自分たちがやるべきこと」をもう一度よく考えてほしいと思います。

そうすることによって、日本のテレビがもっと個性にあふれる面白いメディアになり、再び存在価値を上げることができるのではないでしょうか。

鎮目 博道 テレビプロデューサー、顔ハメパネル愛好家、江戸川大学非常勤講師

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しずめ ひろみち / Hiromichi Shizume

1992年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなど海外取材を多く手がける。またAbemaTVの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究する。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社・2月22日発売)

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