健康茶にステロイド、「花粉症」民間療法の危うさ 監視には限界、有効性の評価・検証も進まず

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ステロイドが混入していた「ジャムー・ティー・ブラック」
ステロイドが混入していたことが判明した「ジャムー・ティー・ブラック」。花粉症の症状緩和効果をうたい、楽天市場などで人気商品となっていた(記者撮影)

「とても助かっています。花粉症の薬は強めじゃないと効かないのですが、それだとものすごく眠くなる」

楽天市場で販売されていた、とある健康茶に寄せられた5点満点のレビュー。投稿者は花粉症の症状が強く、効果のある薬では眠気などの副作用に悩んでいたため、薬の服用をやめてこのお茶を飲んでいるという。

ほかにも「花粉症治りました」「芸人の〇〇がテレビで紹介していたので買った」など、117件の口コミは総じて高評価だ。総合評価は5点満点中4.5点。1袋6100円と決して安くない価格設定にもかかわらず、人気商品のようだった。

健康茶の名称は「ジャムー・ティー・ブラック」。国民生活センターは4月12日、花粉症の症状緩和効果をうたったこの健康茶に、デキサメタゾンというステロイドの一種が含まれていると公表し、注意を呼びかけた。販売元の「株式会社香塾」(大阪市)は現在、販売を取りやめて返金対応などを行っている。

「効き目」明記の商品には要注意

「過去10年で最多」とも言われた今年の花粉飛散量。コロナ禍で外出を控えた過去3年とは異なり、出社日を増やす企業なども相次ぐ中、多くの花粉症患者にとってはつらい春だったはずだ。

調査会社のインテージによると、市販されている鼻炎治療薬の年間売り上げは毎年400~500億円程度。だが2023年は3月だけで約200億円が売れたという。

鼻炎治療薬と目薬の月別販売額

花粉症には重症度に応じた治療薬が存在し、つらい場合にはアレルギー検査をしたうえで適切な薬を処方することが望ましい。だが生死に直接かかわるような病気ではないため、症状が重篤でない限り、病院への相談は後回しになりがちだ。そのため市販薬を漫然と飲むケースや、健康食品やサプリといった手軽な民間療法を活用する人も多い。

例えば、楽天で「花粉症」と検索すると5万件以上の商品がヒットする。その中には市販薬だけでなく、健康茶や飴、サプリなどもたくさん存在する。著名人がSNS上などで「花粉症に効く」と紹介して拡散するケースもあり、今回のジャムー・ティーも、複数のインフルエンサーや芸能人の発信が人気に拍車をかけていたようだ。

こうした現状に対し、「民間療法の中には効果がわからないものもあり、高額な場合や、食品にもかかわらず効き目が明記されているものには注意をしたほうがよい」と警鐘を鳴らすのは、日本医科大学教授で、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会理事長なども務める大久保公裕医師だ。

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