同社は、世の中で”良い”といわれる部品を高価でも積極採用し、採用部品のブランドで自社ブランドの知名度不足を補った点も斬新だった。
オーディオ機器は料理に似たところがあり、良い素材を用意するだけで完結するわけではなく、熟練のワザでそこそこの素材でも美味さを引き出すこともできる。もちろん、両方が揃えば言うことはないが、OPPOは製品価格に見合わない高級素材(ESS Technology製のハイエンドDAコンバーター)を盛り込んだり、ディスクリート仕様のラインアンプを搭載するなど、採用する素材や調理方法にこだわってその部分を”ブランド”として上手に使った。
“この価格帯で、こんな高級なDAコンバーターが搭載されるのか。こんなスペックを実現しているのか。他社は実現していない機能を持っているのか。しかもアップデートでどんどん進化するとは!”
AV機器マニアの夢をそのまま映し出したかのようなOPPOのブルーレイプレーヤーは、驚きを呼び、北米を中心に人気に火が付いた。独立ベンチャーとして起業し、わずか10年で年25万台規模を売るまでに成長したのは立派な数字だ。500ドルを超えるブルーレイプレーヤーの市場では、とりわけ欧米で圧倒的な強さを誇る。
しかし、オーディオやビジュアルといった機器のファンを本当に驚かせたのは、2014年、据え置き型ヘッドフォンアンプ「HA-1」と振動板を平面磁界駆動するヘッドフォン「PM-1」を発売し、世のヘッドフォンブームに割って入ってきた時のことだ。
HA-1とPM-1は、とりわけマニアの間で盛り上がっているヘッドフォンという市場に、それまで特徴としていたコストパフォーマンスの高さやマニアックなハードウェア構成、それにファームウェアの工夫で可能な範囲内で詰め込んだ機能性を盛り込んでいた上、音質の方も本格的なものになってきていた。
今年はその勢いを駆ってiPhoneを主たるターゲットに、スマートフォンを高音質化するポータブルヘッドフォンアンプ「HA-2」と、コンパクトな平面磁界駆動型ヘッドフォン「PM-3」を発売した。
両者の音質をチェックして驚かされたのは、しっかりと高音質を実現するために作り込まれた、定番ブランドとしての薫りを醸すようになってた点だ。もはや、部品メーカーの威光に頼るだけのブランドではなくなったといえる。
ここまで長々とOPPO Digitalが歩んできた背景について述べてきたのは、厳しい経営環境のオーディオ&ビジュアル産業において、日本企業と交代するかのように成長してきた彼らが、何を強みにしているかを伝えたかったからだ。
HA-2の高い質感
ここからは最新製品について掘り下げることにしよう。
HA-2は、アルミ削り出しの質感高いボディ、音量ダイヤルに、まるで革製手帳カバーのようなステッチ入り入りの革外装があしらわれている。元より質感にはこだわっていたOPPO Digitalだが、ここまで外観を重視した設計は初めてかもしれない。筐体を革でくるんだデザインは、単に質感を高めているだけでなく、スマートフォンと重ねて使う際などに傷が付く心配をせずに済むという利点もある。
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