妻に「バンパイア」と呼ばれたプーチンの素顔 どのようにロシアのトップに上りつめたのか?

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さらに、プーチンがのし上がる大きなきっかけがありました。エリツィン政権下で働いていたとき、エリツィン大統領の娘がからむ汚職スキャンダルが発覚します。プーチンは、汚職事件を闇に葬るつもりでした。汚職を問題視すれば自分に火の粉が及びかねないとの懸念もあったでしょうが、一度は仕えた以上、上司エリツィンは見捨てずに仁義を貫くという思いが強いようにも感じます。

プーチンは、エリツィン大統領の足下をすくいかねない汚職事件の捜査を阻み、エリツィンに恩を売ることでプーチンの存在感は政権内で非常に大きくなっていきました。プーチンはエリツィン一家に大きな貸しをつくり、もはやエリツィンはプーチンに強く出ることができなくなりました。

プーチンは、わずか2年弱で、FSB長官→副首相→首相→大統領とトントン拍子で就任します。これは、セミヤー(ロシア語で「家族」「家」という意味。エリツィンに近い人物たちが、“セミヤー”と呼ばれた側近集団をつくって国政を動かし、国有財産を私物化し、政治腐敗が蔓延していました)に囲まれ慢心するエリツィンが、リーダーや後継者を育てず、セミヤー連中も利権目当てに右往左往するばかりで、国を託すに足る人物がプーチン以外にいなかった、その隙をうまく突いたといえるでしょう。

「クレプトクラシー」体制とは?

エリツィン同様、プーチンもさっそく国を私物化します。「クレプトクラシー」は、ギリシャ語の「盗む」(クレプテス=kleptes)と「支配」(クラトス=kratos)を合わせた造語で、つまりは「泥棒政治」「盗人支配」。少数の政治家や官僚らが、国民や国のカネや資産を横領し、私服を肥やす政治・支配体制をいいます。「クレプトクラット」は、その体制をつくる「泥棒政治家や盗人大富豪たち」のことです。

ソ連崩壊の混乱に乗じて富を築いた「オリガルヒ」たちを使って、プーチンは自らの地位を高め、体制を安定させ、強いロシアを構築します。

しかし、オリガルヒ全般を育てるのでなく、自分に忠誠を誓い「熱心なファン」のように信奉し、自分の信頼に足るオリガルヒを選んで育成することに、プーチンは精力を傾けました。

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