妻に「バンパイア」と呼ばれたプーチンの素顔 どのようにロシアのトップに上りつめたのか?

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そして、彼らを「クレプトクラット」に仕立てます。社会主義の旧ソ連は、何でもかんでも国有の無責任経営でしたから、これを民営化するようなふりをして、独占的に彼らに経営させて、自分に利用できるように富を盗み取らせます。

プーチン本人が“盗人大統領”の烙印を押されてはまずいので、ごく少数の近しい者たちに富を築かせ、彼らを使ってその富を自分が「密かに、かつ自由に入手し利用できる仕組み」をつくったのです。

プーチンが「世界一の大金持ち」ともいわれるのは、この仕組みがあるからです。

プーチンの健康状態は?

これほどまでにウクライナをはじめ、世界を苦しませてしまったプーチンは、引退するか、死ぬか──選択肢は二つに一つしかない、と私は思います。

プーチンが死ぬとすれば、病死するか、暗殺されるか、でしょう。現在、70歳なので病死することもありえます。ウクライナのブダノフ情報総局長は、プーチンの健康状態が悪化しているという「情報を完全に確認している。そのうちの1つがガンである」と、発表しています。

プーチンは何をしたかったのか?
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また、「血液ガン、極めて重症」と、元KGBのカルピチコフも指摘しています。

元英陸軍参謀総長ダナットの観察では「プーチンの手の甲にM、あるいは数字の3のような黒ずんだ大きなシミがある。これは体のほかの部分にはもう注射が打てないときにしか出ないシミで、パーキンソン病か膵臓ガンだ」といっています。

ロシアの著名な腫瘍学的甲状腺の専門医シチェレグトフ親子や、甲状腺ガンの第一人者セリヴァノフなどは、数百日もソチの別荘で付きっきりの治療をプーチンにほどこしたり、耳鼻咽喉科の医師イェサコフも泊りがけで治療したりしてきたのです。それでも彼の寿命は2〜3年であるといっています。

暗殺の試みは、これまでクリミア併合、ウクライナ侵攻の以前から8回もあったそうで、ウクライナ侵攻後も、3回狙われています。どんな死に方にせよ、プーチンが死なない限り、この戦争は終わらないのではないでしょうか。

寺谷 弘壬 青山学院大学名誉教授

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てらたに ひろみ / HIROMI TERATANI 

1937年神戸市生まれ。1960年神戸市外国語大学ロシア語科卒、フルブライト全額支給生として米プリンストン大学大学院社会学部博士課程に学ぶ。プリンストン大学ロシア研究所研究員、コロンビア大学客員研究員、ネブラスカ大学大学院教授(リンカーンとオマハ)。ソ連にも留学し、ロシア、アメリカ、オーストラリア、韓国の大学などで教える。日本では、青山学院大学(国際社会学)ほかいくつもの大学で教える。現在、国際比較研究所研究所長、青山学院大名誉教授。著書に『ロシア・マフィアが世界を支配するとき』、『プーチンは何をしたかったのか?』(いずれもアスコム)など70数冊。

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