中国の一極支配が進む「資源と産業の世界地図」 強固なエネルギー基盤を築いた強かな国家戦略

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次に、再生エネルギーです。1997年、京都議定書が取りまとめられた当時とはまったく違い、再生エネルギーの増加は著しいものがあります。それどころか、中国は、太陽光発電などのためのパネルなど関連産業の育成に成功しており、世界の再生エネルギーの設置、運営をリードしています。

その結果、水力発電、風力発電、太陽光発電関連設備の製造では、世界のベスト10の多くを中国企業が占めています。

風力発電は装置だけでなく、発電運営会社の世界市場シェアの上位8社のうち、6社が中国企業です。世界の水力発電所建設については70%、世界の風力発電設備生産量では50%を中国企業が請け負っています。

太陽光発電設備についても、世界の生産量のうち、ポリシリコンが58%、シリコンウエハーが93%、太陽電池セルが75%、太陽電池モジュールが73%と、中国企業の活躍が目立つ分野です。

中国の再エネ支配力は、ある意味ではOPECよりも世界へのインパクトを持つものになる可能性があります。というのも、グラスゴー合意に基づき世界が再エネシフトに拍車をかければかけるほど、中国の関連産業が潤う仕組みとなっているからです。

電気自動車で存在感を高める中国製造業

それを象徴するのが電気自動車です。2021年における世界の電気自動車の販売台数の1位はテスラです。アメリカの会社ではありますが、中国やドイツでも生産しており、テスラは中国とも深い関係があります。それから、2位がBYD、3位がSGMWという会社で、ともに中国の会社です。7位も上海汽車という中国の会社です。上位10社のうち、中国企業が3社入っています。

ドイツのメーカーも上位10社のうち4社にランクインしており、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデスがそれぞれ4位、5位、6位です。さらにアウディが9位につけていますが、合計という意味では中国にかないません。また、8位のボルボはスウェーデンの会社ですが、資本は中国です。10位、11位がヒュンダイ、キアで、韓国の会社が入ってきています。

12位以降は基本的に中国のメーカーがほとんどです。13位にフランスのルノー、16位に日本のトヨタ、17位にアメリカのフォードとなっていますが、基本的に中国の会社が並んでいます。

それから19位に「小鵬汽車(シャオペン)」という会社がありますが、蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng)、理想汽車(LiAuto)が中国の新興EVメーカーの御三家です。これらは三兄弟と言われており、まだまだ採算を採るのに苦労していますが、どんどん伸びてきています。

また、中国は電気自動車の輸出を手がけています。2021年度においては、欧州に23万台を輸出しており、前年度の4.8倍です。また、アジアには22万台を輸出しており、日本にもBYDのバスが入ってきたり、東南アジア各地への輸出もしています。

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