中国の一極支配が進む「資源と産業の世界地図」 強固なエネルギー基盤を築いた強かな国家戦略

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中国の天然ガス供給の対外依存度は、45%を上回っています。自国でも天然ガスを産出しており、シェールガスも採れるとはいえ、それ以上に消費量が増加しており、今後も増えていくものと考えられます。

そうした状況のなか、近年、輸入先として割合が増えてきているのが、ロシアです。2019年12月に完成した「シベリアの力」というパイプラインによって、東シベリアから天然ガスを輸入しています。さらに、西シベリア、東シベリアからの天然ガスを、モンゴル経由で輸入する「シベリアの力2」も建設予定です。

資源外交で高まる「中国の影響力」

 また近年、中国はロシアだけではなく、他のエネルギー諸国とも精力的な資源外交を展開しています。

2022年12月7日から10日まで、習近平はサウジアラビアを訪問しました。近年、共にOPECプラスを設立し世界の油価をコントロールするなどロシアとの接近が目立つサウジアラビアですが、そこに中国が加わり、石油天然ガス開発、技術分野での協力、さらには金融分野においても協力を深めることで、石油の輸入代金にドルを使わない「脱ドル政策」を推進することが見えてきました。

さらに2023年3月10日、中国の仲介により、サウジアラビアとイランが歴史的な和解をし、国交関係を樹立しました。これまで中東に深く関与してきたアメリカが、シェール革命を実現したことでエネルギー自給を達成し、中東への関心を以前ほど見せなくなっていたことを危惧する声がありましたが、中東最大の懸案であるこの両国関係をアメリカ抜きに改善したことに世界は驚きました。

イランは日本と長く友好関係にある国ですが、ウクライナ侵攻ではロシアにドローンなどを提供していると報じられています。ロシア、中国、サウジアラビア、イランが手を組むようになれば、西側諸国には不都合なシナリオが浮かんできます。

以上、中国のエネルギー戦略について、化石資源、再生エネルギー、資源外交の3つのポイントについて述べました。次々と計画が実現して中国の資源エネルギー戦略を担当する官僚は大変やりがいを感じていることでしょう。エネルギー安全保障の観点でとらえれば、日本も参考になる部分は敬意を払い取り入れていく必要があると感じています。

平田 竹男 早稲田大学教授/早稲田大学資源戦略研究所所長

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ひらた たけお / Takeo Hirata

早稲田大学大学院スポーツ科学研究科教授。早稲田大学資源戦略研究所所長。1960年大阪生まれ。横浜国立大学経営学部卒業、ハーバード大学J.F.ケネディスクール行政学修士、東京大学工学博士(環境海洋工学専攻)。1982年通商産業省(現経済産業省)入省。在ブラジル日本大使館一等書記官、資源エネルギー庁石油天然ガス課長等を歴任。2002年に日本サッカー協会に転職し、専務理事就任。2007年より早稲田大学に資源エネルギー関連の講義を開設、15年以上にわたって全学部を対象とした講義を行っている。2013年から2021年まで安倍晋三政権及び菅義偉政権において内閣官房参与(資源戦略担当)。

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