「理事の半数以上を女性に」東大で起きた大変化 副学長・林香里さんに聞く数のパワーとは?
ーー欧米諸国はもともと人種的に多様性のある社会だから組織のダイバーシティが進んだのではなく、今の日本と同じように改革の努力を重ねてきたのですね。
「日本社会は均質性が高い」と表現されることが多いのですが、私はそれが事実だとは思いません。
私たちの身近にも、多様な文化や価値観が存在します。日本社会は均質なのではなく、社会が均質であることを前提としてきたにすぎない。
少なくともはるか昔から日本人も男性と女性が半数ずつ存在していたのであって、最近になって急に女性が増えたわけではありません。
組織に女性が少ない原因を日本の文化や社会構造のせいにするのは、おかしな話ではないでしょうか。
女性はデコボコ道をはだしで走ってきた
ーーこれから東京大学で多様性改革が進み、女性研究者、教員が増えていくと、日本社会にどのような影響をもたらすとお考えですか。
まず、あらゆる研究分野に女性の視点が入るようになれば、これまで男性だけでは気付けなかったような研究開発が進んだり、学問の発展があったりするわけで、それが社会の進歩につながることは間違いありません。
また、東京大学は高等教育機関の一つでしかありませんが、本学が多様性改革に本気で取り組み成果を出していくことで、日本社会全体が変わるきっかけの一つになればとも思っています。
ありがたいことに東京大学は日本の高等教育機関の中で非常に高く評価されてきましたから、アカデミアの世界の変革を象徴する意味合いもあると自覚しています。その改革を担う者として、今、大きな責任を感じているところです。
ただし、東京大学だけが頑張っても社会を変えることはできません。
国内外の他の大学や研究機関、さらには民間企業の方たちとも問題意識を共有し、皆さんに私たちの取り組みを応援していただけるような成果を出していきたい。
例えば、東京大学が企業の採用担当者から高く評価される人材を送り出すことで、「ダイバーシティを尊重する大学の出身者は良い仕事をする」という認識を社会に広めることもできるでしょう。
それによって他の大学や企業とも「やはり組織には多様性が必要なのだ」という意識を共有できれば、少しずつ日本社会も変わっていくのではないかと考えています。