「理事の半数以上を女性に」東大で起きた大変化 副学長・林香里さんに聞く数のパワーとは?
ーー21年4月、東京大学で理事の半数以上を女性にする新体制が発足し、その抜本的な多様性改革に注目が集まりました。主要国立大学の女性役員比率が1〜3割にとどまる中で先駆的な取り組みと言えますが、このアクションは学内にどのような影響を与えましたか?
学内の空気はかなり変わったと感じています。
例えば会議で予算を決める際も、対象となるプロジェクトで女性メンバーを雇用する計画があるかどうかが重要な論点となったり、シンポジウムを企画する際にパネリストの候補者が全員男性だった場合は、「多様性が欠けているので女性パネリストも招くべき」と誰かが必ず指摘したりするようになりました。
以前はこのような意見が出ると、「なんだ、またジェンダーの話か」といった空気が漂ったものですが、最近はそんな場面も減りました。
多様性改革の象徴として
多様性やジェンダーに関して、少なくとも表立って否定的な発言はできなくなっている。それは大きな変化ですし、私自身も手ごたえを感じています。
ーー理事の半数を女性にする施策は、単に数を増やすという以上のインパクトがあったということでしょうか。
そう思います。この役員体制が発足したのは藤井輝夫総長が就任したタイミングだったので、これから東京大学が多様性改革に本気で取り組んでいく姿勢を示す象徴的なメッセージになったと思います。
ただし、それだけで先ほどお話しした変化が起こったわけではなく、その後も東京大学ではさまざまな取り組みを続けてきました。
2022年6月には「東京大学ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)宣言」を公表し、多様性の尊重と包摂性の推進を大学運営の柱にする方針が改めて明確に示されたことも、学内の空気を変える大きなきっかけになっています。
とはいえ変化は始まったばかりで、D&Iに関する課題はまだまだ山積しています。
何しろ、現在の東京大学は男性が圧倒的に多い組織ですから、制度にしろ、学内のムードにしろ、改革しなければいけないことはたくさんあります。