家事も労働に含めた「実感時給」が伸び悩む実感 「男性の家庭進出」は短期を犠牲にした長期戦略

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男性と子ども
家事の生産性は低下している?(写真・PIXTA)

2023年春闘は強い結果となっており、賃上げによって日本経済の好循環が始まるという見方も多くなってきた。

しかし、現状では人々の実質賃金の低迷への不満が「賃上げ」に対するプレッシャーになり、企業がこれに対応したという状況である。来年以降に企業が成果を得られなければ次第に「賃上げムード」はトーンダウンしていくだろう。

問題は、企業が賃上げに期待する「成果」は曖昧であることである。

例えば、多くの企業が「良い人材を確保するため」と挙げているが、人材プールが変わるわけではないので、横並びで賃金を引き上げた場合はあまり改善しないだろう。

他には、賃上げによって家計が消費に積極化し、回りまわって企業の収益が改善するというパスも当然あるのだが、これまで家計は共働きによって増えた収入をひたすら貯蓄してきたことを考えると(「賃上げで万事OKとはいかない共働き社会の内実」)、そう簡単に「回転」が変わるとは思えない。

「ムカつく」を変換すると「賃上げしろ」に

そもそも、なぜこれほどまでに「賃上げ」に注目が集まっているのか。人々のさまざまな「不満」が「賃上げ」というわかりやすいテーマに集約されているのではないか、と筆者はにらんでいる。

むろん、最近の実質賃金の減少によって家計が苦しくなっていることは事実である。しかし、マクロデータでは貯蓄率は高水準を維持している事実もあり、賃金が「足りない」という感情は、本当は「(将来不安に対応した貯蓄を確保するためには)足りない」ということなのではないか。

社会に対する「ムカつく」「不安だ」という漠然とした感情が、「賃上げしろ」に変換されている可能性がある。したがって、仮に多少の「賃上げ」を達成したとしても閉塞感は解消されず、根本的な解決策にはならない可能性が高いと、筆者は予想している。

賃上げに対する期待感からか、労働時間減少による「時給」のテクニカルな上昇すらも、賃上げ期待に結び付ける議論も生じている。月次で支払われる賃金は増えていないが労働時間が減っているので「実質的な賃上げ」になっているという指摘である。

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