団塊の世代が75歳以上となる2025年は、医療介護や国・市町村財政の逼迫が予測されており、「2025年問題」と呼ばれている。社会保障費の増大が現役世代の将来不安につながりやすくなり、団塊の世代との利害対立を招きかねないという「世代間対立」を先鋭化させるリスクがあるという。
今回は、「世代間対立」という切り口から経済・金融政策を議論する。
すでに「世代間対立」が目立っている事例がいくつもある。たとえば、少子化対策として議論されている児童手当の所得制限撤廃の是非について、日経新聞とテレビ東京の世論調査(2月24〜26日実施)では世代間で大きな違いがみられた。
具体的には、「撤廃すべきでない」は54%、「撤廃すべきだ」は38%だったが、世代別でみると「撤廃すべきだ」と答えた人の割合は18〜39歳が61%、40〜50歳代が37%、60歳以上は30%と、年齢が低いほど高い傾向がみられたという。
職場に漂う「上が詰まっている」感
他にも、2月12日の米紙ニューヨーク・タイムズが報道したことで注目され、ネット上などで「炎上」した米イエール大学の成田悠輔氏の「集団自決」「切腹」発言も「世代間対立」の例である。
むろん、「集団自決」という発言は配慮を欠いた発言であることは誰の目にも明らかだが、この発言を擁護する動きもあった。それだけ、若者の間では高齢化社会における将来不安や閉塞感が大きい。
労働市場では高齢者の労働参加率は上がっており、ポストを奪い合う相手が同世代だけとは限らなくなっている。
少子化で売り手市場が定着する中で同世代の競争は少なくなっているのかもしれないが、その分だけ同世代の競争から生き残っても「上が詰まっている」という感覚を持ちやすい面がある。転職という選択肢も当たり前となっており、「長く働ける良い会社だ」という高齢者による励ましは、もはや若い世代には刺さらない。
いわゆる「老害」の問題は経済学では「労働塊の誤謬」(lump of labour fallacy)と呼ばれ、OECD(経済協力開発機構)などの研究では一般に「誤り」(高齢者が若者の仕事を奪っているというデータはない)とされている。しかし、「世代間対立」にはつながってしまっている面は否定できない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら