高齢化がマクロで見た経済に与える影響は一概にはいえない。たとえば、日本は生産年齢人口当たりの実質GDP(国内総生産)の伸び率は高いという指摘があるが、これは分母である生産年齢人口の経済に占める割合が減っていることが主因だろう。
仮に、高齢者の経済活動がなくなれば、その分のGDPはごっそりと抜け落ちることになり、生産年齢人口当たりのGDPの伸び率も落ち込むことが予想される。すなわち、現役世代も高齢者の需要や経済活動に支えられている。
ただ、具体的には見えにくいものの、高齢化が経済成長率にネガティブに働いている可能性もある。
社会的ニーズは高いが、生産性の低い医療介護職
たとえば、厚生労働省の推計によると、介護職員の必要数は右肩上がりである。
一般に、介護・医療のようなサービス産業の生産性は低く、これらの産業に従事する人が増えることは、国全体の労働生産性の低下に寄与する。
全体として労働生産性(=賃金の多い)が高い製造業と労働生産性が低いサービス業における労働生産性と就業者数の変化を見ると、1980年以降では生産性の高い製造業の就業者数が増加せず、生産性の低いサービス業の就業者数が増加してきたことがわかる。
特に、2000年以降はサービス業の生産性は全くといってよいほど高まっていない中で、就業者数だけが増加している。
経済合理性の観点から、労働者は高い賃金を求めて生産性の高い(=賃金の多い)産業に自然と移動するという考え方もある。しかし、実際にはそうなっていないようである。これは、労働者が経済合理性以外の要因で職業を選択していることを示す。前述したような、医療・介護に対する社会的なニーズの高まりなどが、労働者の産業構成を決めているのだろう。
このように、産業構成が人口動態によって決まっている面があるとすれば、「高齢化」が経済成長率にネガティブに働いている可能性がある。
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