そして、接線を求める新たな手法こそが、微分法だったのです。つまり、微分法とは、動いている物体のある瞬間の速度を求めることです。そして、この微分法を作り上げたのが、天才科学者アイザック・ニュートン(1642~1727)でした。彼は1665年、わずか23歳という若さで、微分法を編み出したのです。
さて、微分法が何かがわかったところで、最初の自動車の速度メーターの話に戻りましょう。自動車のタイヤには、回転を検出するセンサーがついていて、1回転で、何回信号が出るかが決まっています。速度が速くなれば、信号と信号の間隔が短くなり、遅くなれば長くなります。
タイヤ1回転で進む距離は一定ですが、速度は絶えず変化しているので、回転信号の間隔も変化しています。そこで、自動車では搭載されたコンピューターを使って、瞬間瞬間の信号の間隔を元に分析することで、速度を計算し速度メーターに表示しているというわけです。このように微分の考え方を使えば、未来を予測することができるのです。
電子体温計が30秒で測れる理由
また、身近なところでは、「電子体温計」にも微分法が使われています。
電子体温計には、実測式と予測式の2種類があります。実測式は体温の測定に5分から10分程度かかるのに対して、予測式は30秒もかからずに測定することができてしまいます。
一体どのような仕組みで測定しているのでしょうか。予測式とは、その名の通り、測り始めてからの変化をもとに、10分後はどうなっているかを、微分法を使った計算によって予測しているのです。
まず、電子体温計を脇に挟むと、電子体温計の先端に取りつけられたセンサーが体温によって温められていきます。通常、冷たいものを温かいものに当てると、冷たいものの温度はすぐに上がりますが、常温のものを温かいものに当てても、温度はなかなか上がりません。これは、温度差によって、熱が伝わる速度が異なるからです。
逆に、熱が伝わる速度によって、温度差を逆算することができます。
電子体温計には中に、微分方程式と呼ばれる方程式を解くプログラムが内蔵されていて、センサーの温度が上がる速度を算出し、それをもとに、体温が何度で落ち着くか、10分後を予測しているのです。
一方、微分法と逆の関係にあるのが、「積分法」です。積分法についても説明していきましょう。
1665年に微分法を創始したニュートンは、積分法の研究も始めました。微分法が曲線の接線の傾きを求める(物体の速度を求める)方法であるのに対し、積分法は、直線や曲線に囲まれた領域の面積を求める方法です。
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