10歳から歌舞伎町の「トー横少女」が帰宅できぬ訳 父からの虐待を、愛情として受け止めていた

✎ 1 ✎ 2
拡大
縮小
近年、10〜20代といったZ世代のホームレスが増えている。その背景に見え隠れするさまざまな社会問題をお届けします(写真:まちゃー/PIXTA)
「ホームレスと聞くと、『貧困』『路上生活』などを想像する人は多いのではないでしょうか。しかし近年、10〜20代といったZ世代のホームレスが増えているのです」
そう語るのは、元お笑い芸人で、現在はホームレスの実態に迫るYouTubeチャンネル「アットホームチャンネル」を運営する青柳貴哉さん。彼らがホームレス(=家に帰らない)生活を選んだ背景には、さまざまな社会問題が見え隠れしているといいます。
青柳さんの書籍『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』より一部抜粋・再構成してお届けします。(前編はこちら

中学3年生のモカさんに学校について尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「私、小学校4年生からほとんど学校には行ってないんですよ」

ホストのお兄さんの仕事が終わるのはいつも朝方で、モカさんはそれまでの時間を歌舞伎町の路上やネットカフェで過ごしていた。時には、ホストクラブのバックヤードでお兄さんの仕事が終わるのを待たせてもらうこともあるそうだ。もちろん警察に補導されて、実家に連れ戻されることも何度もあった。しかし、そのたびに実家を抜け出し、お兄さんのいる歌舞伎町へと舞い戻る。そんな日々を繰り返してきた。結果、歌舞伎町にたどり着いた10歳から今まで、学校にはほとんど行っていないという。

トー横界隈の古株と思われたくない

諸説あるが、「トー横界隈」や「トー横キッズ」といった言葉やカルチャーが生まれたのは2019年頃。モカさんと僕が出会ったのは2022年で、彼女が歌舞伎町に通うようになったのがそこから5年前。出会ってから1年が経ちこの本を執筆している2023年から数えると6年前の2017年。モカさんが歌舞伎町で過ごすようになった当初、まだ「トー横界隈」や「トー横キッズ」という言葉は存在しなかったのではないだろうか。当時の彼女がここで知り合った家出少年・少女のコミュニティーこそが「トー横界隈」の走りであったに違いない。

今ではトー横界隈と呼ばれるようになった植え込みの近くに座るモカさんに、僕は「じゃあ古株ですね。トー横界隈のスタート時からいるんだから」と何気なく言った。するとモカさんは、少しだけ困ったような素振りで、髪をいじりながらこう答えた。

「うーん……。それ(古株であること)を言うと、みんな怒るんですよね。古いからってイキがってるなよみたいになるんで。そういうのはみんなには言わないようにしてます」

次ページ「マウント」と周囲との関係
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
【田内学×白川尚史】借金は悪いもの?金融の本質を突く教育とは
【田内学×白川尚史】借金は悪いもの?金融の本質を突く教育とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT