「ドコモショップ最大手」に浮上したノジマの魂胆 代理店買収で1000超の携帯ショップを傘下に

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同年9月にはノジマを含む事業会社やファンド11社と水面下で交渉を開始。12月までに2度の入札などを経て、買収価格や従業員待遇などの面で最も好条件を出したノジマが選ばれたようだ。

伊藤忠は1992年からドコモショップの運営を手がけてきた。コネクシオは1997年に伊藤忠の100%子会社として設立。当初は伊藤忠の通信関連事業の業務委託先だったが、ドコモショップ運営事業を引き継いでから業態を転換し、現在に至っている。

直近では伊藤忠とコネクシオとの間で取引関係はほとんどなかったもようで、資本関係を持つことでのシナジー効果は薄いと判断したとみられる。

コネクシオが主戦場とする携帯販売代理店の市場は目下、縮小傾向にある。ドコモが2026年3月期までに全体の約3割の店舗閉鎖を計画するなど、キャリア各社は不採算店舗を軸に統廃合を加速。さらに通信料金の廉価プラン登場やスマホ端末の買い替えサイクル長期化などにより、業況は厳しさを増している。

実際、コネクシオと業界首位のティーガイアは2023年3月期に最終減益を見込むほか、大手のベルパークも2023年12月期に最終減益を予想するなど、軒並み業績不振が続いている。

約850億円を投じ過去最大級のM&Aに

にもかかわらず、ノジマは「大盤振る舞い」に出た。

TOB価格は1株当たり1911円と、TOB発表直前の株価に6割のプレミアム(上乗せ幅)を付けた。買収資金は総額854億円で、その全額を銀行からの借り入れで賄っている。2022年末時点の現預金が約550億円しかないノジマには、当然重い負債となる。

ノジマの野島廣司社長
野島廣司社長は「今後もチャンスがあれば(キャリアショップの)M&Aを手がけていきたい」と語る(撮影:今井康一)

ノジマにとっては、2015年に買収したITX(負債返済込みで約850億円)に並ぶ過去最大級のM&Aだ。厳しい携帯販売代理店業界で、なぜノジマは勝負に出たのか。ある市場関係者は「残存者利益を狙っているのだろう」と分析する。

ノジマの野島社長は東洋経済の取材に、「家電も携帯ショップも成熟市場だ。ノジマは成熟市場で伸ばせるノウハウがあるから、コネクシオを買収した。われわれはITXを買収して立て直した(実績もある)」と強調する。

野島社長は、コネクシオの業績が低迷してきた背景に、現場の疲弊や士気低下が影響しているとみる。そのため従業員の賃金引き上げに加え、営業ノルマを課さずに現場の裁量を拡大する「ノジマ式」経営術の導入などによって、売り上げの拡大につなげる考えだという。

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