花粉症地獄の日本「森がスギだらけ」になったワケ 岸田政権がついに花粉症対策に取り組むが…

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山というのは、畑と違って傾斜がきついし、石や落ちた枝、繁茂した下草ややぶなどでとんでもなく歩きにくい。そのため、林業は危険も多い仕事である。管理しやすいということは、安全面も含めて「業」として行ううえでは非常に重要な点である。

もし、スギなどの針葉樹が十分に確保できなくなれば、木造住宅を建てることが不可能とは言わないまでも困難となるだろう。針葉樹と比べて成長に時間がかかる広葉樹を建築材料としなければならないとすれば、たちまち木材不足に陥り、価格も高騰、いや暴騰することは間違いない。

北海道にはスギの花粉症はほとんどない

ただ、スギやヒノキ以外にも有用な針葉樹はある。北海道林業の主要樹種はトドマツ、カラマツ、トウヒなどである。スギは北海道では南部の一部地域でしか育たないからだ。

従って、北海道ではスギの花粉症はほとんどないのだ。カラマツやトドマツの花粉症というのは聞いたことがない(ただし、北海道には広葉樹のシラカバによる花粉症があり、筆者も軽いシラカバ花粉症である)。

カラマツは本州でも育てられている落葉する針葉樹で、建築材として最近注目されている。ラミナと呼ばれる厚み3㎝程度、幅10数㎝程度の板にして張り合わせると、建築材料に適した強度のある柱材や梁材ができるのである。

さらに、ラミナを平面状に貼り合わせたものを、縦横に直交する向きで何層にも貼り合わせて巨大な壁材(CLT)にすれば、非常に頑丈な構造材となり、これだけで高層ビルを建築できるほどである。

このように、同じ針葉樹でも樹種によってそれぞれ特性があるため、スギに偏ることなく、目的に合わせていくつかの樹種をバランスよく育成するということも1つの対策だろう。

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