花粉症地獄の日本「森がスギだらけ」になったワケ 岸田政権がついに花粉症対策に取り組むが…

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1950年から1970年の間、年間35万~40万ha程度の広大な面積の植林が行われた。その結果、現在、全森林面積に占める針葉樹を主とする人工林の割合は約40%(約1000万ha)に達している。

これが、花粉症が社会問題にまでなった大きな原因である。ちなみに日本国民の花粉症罹患率も約40%と言われている。人工林率と花粉症罹患率の一致は偶然にせよ興味深い。

ところが、1970年頃を境に年間造林面積が急落していき、2019年には約3.3万haとなり、最盛期の10分の1以下となっている。なぜ造林面積が減少しているかというと、いろんな事情が考えられるが、いちばんは林業が廃れて木を伐らなくなったからであろう。木を伐らなければ、その跡地に木を植えることができないので、そもそも造林する場所がないのである。現在、日本の森林資源は史上かつてなく豊富だと言われている。

木材自給率は一時2割程度に下落

では、なぜ木を伐らなくなったのだろうか。木材需要が低くなったからか。確かに、薪や炭が燃料として使われなくなったことで、燃料材として木材需要は大きく縮小した。

一方、日本の住宅のほとんどは木造であり、建築材としての木材需要は引き続き高かった。しかし、建築材料には、実は外国からの輸入材が多く使われるようになった。戦後復興期に日本の木材需要が高まり価格が高騰したこともあり、1964年までに段階的に木材関税の撤廃が進められたからだ。

そのため、1955年に約95%程度あった木材自給率はどんどん低下し、2002年には最低の約19%まで落ち込んだ。現在は約40%まで回復している。

さて、ここで花粉症対策に話を戻そう。林野庁は花粉症対策として、①花粉を飛散させるスギ人工林等の伐採・利用、②花粉症対策に資する苗木による植替えや広葉樹の導入、③スギ花粉の発生を抑える技術(薬剤散布など)の実用化という「3本の “斧”」に取り組むとしている。

日本の森林がそれほど豊富なら、増やしすぎたスギなどの人工林を伐採・利用して減らせばいいではないかというのが①の方策である。ただし、それだけだとただの森林破壊となり、水源涵養や土砂災害防止といった重要な機能も低下して、里の災害が増えてしまうので、伐採後には必ず再造林することとし、その際、少花粉品種のスギを植えるとか、広葉樹の森に転換するというのが②の方策である。

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