花粉症地獄の日本「森がスギだらけ」になったワケ 岸田政権がついに花粉症対策に取り組むが…
4月3日、岸田首相が花粉症対策に取り組むと語って話題となった。花粉症は「社会問題」というわけだ。具体的な対策はこれからだが、その1つと考えられるのが、花粉の少ないスギに転換していくことだという。
国立研究開発法人「森林研究・整備機構」は、2019年3月までに少花粉品種146、無花粉品種6のスギの品種を開発している。こうした品種の苗木をスギ林の伐採後に植えていけば、花粉の飛散を低減できるというのである。
「スギだらけ」背景に社会問題
しかし、そもそもの問題として、なぜスギが日本にこれだけ植えられているのだろうか。スギが多すぎるのが問題なら、かつて里山にあったようなクヌギやナラなどの広葉樹に転換すればよいのではないだろうか。生物多様性の観点からもそのほうが望ましいのではないか──。
それはそれで正しいのであるが、コトはそう単純ではない。これは、花粉症にとどまらず、林業・木材産業、さらには環境問題や持続可能な社会の構築といった「社会問題」を背後に抱えているからだ。
少し歴史をさかのぼってみると、戦後間もない日本では、政府のバックアップの下、荒廃した山にスギなどの針葉樹をどんどん植えていった。それだけではなく、山奥の天然林も伐り拓いてスギの人工林を育てていった。「拡大造林」と呼ばれる林業政策である。造林とは、文字どおり森林を造るということで、苗を植えることだ。
当時の拡大造林政策は徹底していた。東京奥多摩を多摩川沿いにかなり上流まで進んでも、急傾斜の山の斜面がスギの人工林に覆われているという風景を目にすることができるだろう。
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