花粉症地獄の日本「森がスギだらけ」になったワケ 岸田政権がついに花粉症対策に取り組むが…

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ただ、現在の全国平均での再造林率は3~4割程度と言われており、このままいけば、いずれはげ山が目立つようになってしまうだろう(ちなみに筆者の住む北海道の再造林率は8割以上とかなり優秀である)。

森林は40年、50年育てて初めて伐採して収穫できる。それまでは、植え付け、下刈り、枝打ち、間伐など、手間もかかり、お金も出ていくだけだ。従って、ようやく収穫できたら、後はもう植えたくない、どうせ次の収穫まで生きていられないし、となるのも人情として理解できなくはない。だからこそ、国有林を管理する国(林野庁)や民有林の施業・管理を担う森林組合や民間事業体の役割が重要となってくる。

林業は、単なる収益のための事業ではない。豊かな国土、安全な国土を支える基盤であり、公益性の高い一種の公共事業的な性格のものなのだ。

林業家にとってはスギはなかなか優秀

環境保全や花粉症対策が重要課題となっている現代社会においては、スギやヒノキだけの一斉林よりも、多種類の樹木が生える天然林のほうが望ましいとされることが多いが、スギは悪いだけの木ではない。林業家にとっては、スギというものは、実はなかなかの優れものなのである。

第1に成長が早い。早ければ35年程度で伐採可能である。広葉樹であれば80年以上は待たなければ十分利用可能な材にまで成長しない。ただでさえ木材の収穫までに数十年という時間がかかる林業において、成長が早いということはそれだけでも十分な価値がある。

第2に、スギなどの針葉樹はまっすぐに育つため、柱や梁などの建築材料として優れている。曲がりくねって、どんどん枝分かれしていくクスノキやナラといった広葉樹からは、家の柱にできるような材をとるのは難しい。

造林したばかりの若い針葉樹の森は整列した軍隊のように規則正しい(不自然ではあるが)のである。そのため、林業の観点からは管理がしやすい。これが第3の利点である。一方、広葉樹の森を有用な材として効率的に育成する施業技術は開発されていない。

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