「社員の意欲」が急低下する評価面談が生まれる訳 面談で上司が言ってはいけないNGワード

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営業活動も、工夫と改善を凝らし、一変させました。これまでやったことのなかったSNSやブログで毎日発信を続け、Zoomを商談に積極活用しました。また、営業後のフォローをメールやはがき、DMで行い、継続的にコミュニケーションを取ることで見込み客や顧客との関係性を築き、信頼が得られるよう努力したのです。当初はなかなか売り上げの拡大まではつながりませんでしたが、徹底して継続していくことで徐々に成果があがるようになってきました。

そして、1年以上が経過した2022年度後半からは、営業トップの新規売上をたたき出すまでになり、2022年9月~2023年3月の半年間では約30人いる営業社員の中で、粗利益額トップの結果を残すことができたのです。

冒頭の面談は、中村へ評価結果と2023年4月の昇給について伝える面談でした。営業部門を統括するマネジャー、谷川は中村へこう伝えました。

中村が辞表を提出するに至ったワケ

谷川「去年10月からの下半期、君の評価結果は『B』評価だ。中村君なりにがんばってくれていたみたいだが、会社の業績が悪かったので、今回『B』までしか評価できないことになっているから仕方ないね」(大竹事務器は「S」「A」「B」「C」「D」の5ランクで評価結果を決めるルール)
中村「……」
谷川「今期も会社の営業利益はマイナスではないけどほとんどない状態だから昇給もベースアップもなしだ。みんな同じだから」
中村「私が、改善や創意工夫をして営業NO.1の粗利益を上げたことはどう評価されているのでしょうか?」
谷川「おっ!そうだったか?売り上げは富田君が一番だったが、粗利益までは把握できていなかったな。すまんすまん(笑)」
中村「……ありがとうございました」

中村は、自分自身はNO.1の粗利益を出したことで十分以上の利益を稼ぎ出し、会社全体の赤字回避にも貢献したことを谷川に伝えようと思いました。しかし、アピールしたところで評価結果や昇給額が変わることはないことはわかっていたので、思いとどまったのです。

そして、3日後には谷川に辞表を提出しました。大竹事務器は組織の将来を担う可能性のある優秀な若手社員を失ってしまったのです。

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