精神科医が70歳からの「シニア恋愛」を勧めるワケ アウトプットできる人は「前頭葉」が元気な人

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前頭葉が活発に働いている人は、ひとつの物事を前にして、たくさんの答えを出していけます。つまり、思考のスイッチをどんどん切り替えることができますし、何か問題があるときでも安易に投げ出さず、よく考えることができるのです。

前頭葉が関わっているとされているのはアウトプットする機能です。インプット機能は側頭葉(言語理解)や頭頂葉(計算能力)が担っていると考えられています。つまり、これまで蓄積してきた記憶や知識をひっぱり出すのは前頭葉なのです。

だから、非常に高度な内容でも、いつも繰り返している単調な作業ならば、側頭葉や頭頂葉でこなすことができます。しかし、想定外のこと、先の読めないことに対処するのは前頭葉です。つまり、答えがいくつも考えられるような問題を考えるためには前頭葉が元気でなければなりません。

熟年離婚の陰にホルモンの男女差あり

前頭葉の最大の敵は「ルーティン」です。正解がひとつとは限らない問題や予想外の出来事に対処するのが前頭葉ですから、同じことを繰り返して慣れっこになった状況がずっと続くと、前頭葉を使うチャンスが訪れないまま、脳の老化が加速してしまいます。

このルーティンについて説明するときに、よく私が挙げる例が「恋愛」です。昨今、同居期間20年以上の、いわゆる「熟年離婚」が増えているそうです。厚生労働省の統計(2020年)によると、全体の離婚件数のうち2割以上が熟年離婚でした。

熟年離婚の割合が増加している背景として、女性の社会進出や年金の分割など社会経済的な理由はよく知られています。しかし、これとは別に、男女の身体的な差について、ひとつ知っておくべきことがあります。

男性は、加齢によって男性ホルモンの分泌が減ります。男性ホルモンが減ると、どんどん意欲を失っていきます。一方、女性は閉経後、男性ホルモンが増えるので、以前より元気で活動的になる人が多いのです。すると、必然的に夫婦ふたりで楽しむ機会も減り、一緒に暮らす意味も薄れてくるでしょう。

もし、夫婦のあいだでまともな会話がなくなって久しいというのであれば、熟年離婚の決断をするのも悪いことではありません。だらだらと惰性で結婚生活を続けているだけという状態は、前頭葉にも多大なストレスをかけて老化を早めます。マンネリに慣れるよりも、いっそ婚姻関係の解消を検討してみるというのは、けっして悪いことではないと思います。

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