なか卯、「親子丼を40円値下げ」戦略の超したたか 利益を吐き出すことになっても宣伝効果は甚大だ
ゼンショーホールディングスは4月5日、「なか卯」の親子丼の価格を変更すると発表した。「価格改定」と言っても昨今、相次ぐ「値上げ」ではない。その真逆を行く「値下げ」なのだ。親子丼の並盛は従来の490円から450円となる(価格はともに税込み)。しかも、値下げに伴う「減量」などはいっさいなく、内容はそのままだというのだから驚きだ。
鳥インフルエンザ拡大による鶏卵の供給不足と価格高騰で、卵を使った商品の値上げや販売停止が相次いでいる中での、真逆を行く「大勝負」なのだ。
「なか卯」に限らず、大手外食チェーンはこれでも極限までコストを削減し、低価格を実現してきた。今回の「値下げ」はすでに「ギリギリの原価」を一層厳しいものとするはずだ。短期的には利益を吐き出し、収益を圧迫するのは間違いない。
それでもあえて「逆張り」に挑むのは当然、勝算があってのこと。短期的に利益を吐き出す形となっても、「宣伝効果のメリットが勝る」と踏んだのだろう。実際、今回の「値下げ」をメディアは大きく取り上げた。
しかも今回の「なか卯」の発表は「メディアでの取り扱い」を最大化するために、発表時期の設定でも「上手さ」が際立っている。
私はかつてはテレビ東京の経済部記者として、そして独立した現在は広報PRコンサルタントとして、20年以上にわたって企業の広報戦略に直接触れ、現在は支援している。そうした「現場での経験」を基に、今回の「逆張りPR」の「したたかさ」を解き明かしていきたい。
卵価格が歴史的な高騰
「JA全農たまご」が発表した卵卸値の3月平均基準値(Mサイズ、東京地区)は、1キロ当たり前年同月比148円高の343円。3月としては1981年以来、実に42年ぶりの高値となっている。
こうした卵不足と価格の高騰を受けて、販売停止に踏み切る外食店も少なくない。帝国データバンクの調べによると、上場する外食大手100社のうち、卵のメニューの休止・休売に踏み切った企業は28社に達する。
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