なか卯、「親子丼を40円値下げ」戦略の超したたか 利益を吐き出すことになっても宣伝効果は甚大だ

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さらに「なか卯」の場合は日にちだけではなく、時刻も巧妙だった。

発表したのは、午前11時。テレビ局の担当デスクは少しでも鮮度の高い情報を届けるため、「ニュース探し」を当日になっても続けている。午前11時であれば、夕方のニュース番組に余裕で間に合う時間だ。さらに当日の夜のニュース、翌朝のニュース情報番組でも取り上げられる。テレビの露出を最大とするために、まさに計算された発表時間と言えるだろう。

親会社の体力があってこその戦略だ

今回の「逆張り」の理由を考えると、「なか卯」というブランドの「微妙なポジション」も影響していそうだ。

「なか卯」の親会社であるゼンショーホールディングスの売上高は、約6600億円。ライバルの吉野家が約1500億円だから、グループとしては4倍近い差がある。だが、「なか卯」単体で見ると売上高は297億円なので、吉野家の2割以下に留まっている。

つまり親会社・ゼンショーは「圧倒的強者」であるのだが、「なか卯」自体は「挑戦者」として戦わなくてはならない立場なのだ。

昨年、「吉野家」は「開発期間10年」という力の入った親子丼を期間限定で販売し、350万食を売り上げた。このときの販売価格は並盛で437円。卵高騰後の現在、もし「吉野家」が親子丼に再参入をはかるとしたら、当然、昨年以上の価格設定とならざるを得ない。「なか卯」の親子丼は値下げ後で450円なので、吉野家が同等以下の価格を目指すとすると、再参入のハードルはかなり高まったのではないか。

今回の「なか卯」の「逆張り」だが、外食業界の「圧倒的な強者・ゼンショー」だからこそ取れる戦略とも言えるだろう。体力を削る「値下げ」に耐えられるのは、強者のみだからだ。そしてこの親子丼での「逆張り」は、ライバル・吉野家の再参入を阻む「壁」としても機能しそうだ。

下矢 一良 PR戦略コンサルタント

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しもや いちろう / Ichirou Shimoya

早稲田大学理工学部卒業。テレビ東京に入社し、『ワールドビジネスサテライト』『ガイアの夜明け』を経済部キャップとして制作。スティーブ・ジョブズ氏、ビル・ゲイツ氏、孫正義氏、三木谷浩史氏、髙田明氏、藤田晋氏、前澤友作氏らにインタビュー。その後、ソフトバンクに転職し、孫正義社長直轄の動画配信事業(Yahoo!動画、現・GYAO)を担当。「ソフトバンク・アワード」を受賞。現在はPR戦略コンサルタントとして中小企業のブランディングや宣伝のサポート等を行う。

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