なか卯、「親子丼を40円値下げ」戦略の超したたか 利益を吐き出すことになっても宣伝効果は甚大だ

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「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛んだらニュースになる」。これはニュースの世界では、よく知られることわざだ。諸説あるが、英国の「新聞王」と呼ばれたアルフレッド・ハームズワース氏の言葉と言われている。

「ニュースとして報じられるには意外性が必要」という意味なのだが、「サイゼリヤ」「グローバルダイニング」、そして今回の「なか卯」が取った「逆張り戦略」は、まさに「意外性」の最たるものだ。

企業が押さえるべき、3つのポイント

とはいえ、ただ「何でも逆に張れば」メディアが取り上げるというわけではない。この「逆張り戦略」を機能させ、「マス」メディアでの取り扱いを最大化させるには、押さえるべきポイントが存在する。

ひとつは「商品の性質」だ。商品が「マス」メディアの顧客である一般の視聴者・読者にとって、身近なものでなくてはならないのだ。

「テレビの食べ物特集」で最も取り上げられるものといえば、ラーメンだろう。ラーメンの価格は1杯1,000円前後。ほとんどの視聴者にとって「食べようと思えば、食べられる価格帯」にある。視聴者にとって身近な商品だからこそ、テレビとしては取り上げやすいのだ。

反対に「1人前15,000円のフレンチのフルコース」だと、普通の視聴者が気軽に食べられる代物ではない。大半の視聴者に「自分には関係ない」と思われてしまう商品を、テレビは紹介しにくいのだ。

もうひとつのポイントは「大義を背負っている」ということ。ビジネスである以上、「得になる」と見込んで「逆張り」を仕掛けているはずだ。だが、「逆張り」の理由を問われたときには間違っても「そのほうが広告効果も大きくなって、儲かるからです」と「私利私欲」を漏らしてはいけない。記者としても「広告効果のために行動している」企業の術中にはまって、「手のひらの上で転がさせる」のは嫌なものなのだ。

そして最後は「タイミング」だ。「逆」張りである以上、「順」張りが世間の大勢でなければならない。「順」張りを表明する企業が相次ぐ中で、「逆」を行かなくてはならない。「順」張りの表明がひと段落した後では遅く、その「渦中」でなければならないのだ。

次ページ取材でも「看板商品の親子丼」を訴求
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