なか卯、「親子丼を40円値下げ」戦略の超したたか 利益を吐き出すことになっても宣伝効果は甚大だ
外食を取り巻く「値上げ」圧力は、なにも「卵」に限ったものではない。人件費、光熱費、物流費、原材料費の高騰、さらに円安など、挙げればキリがないという状況だ。
帝国データバンクによると、4月に値上げされる食品や飲料は「再値上げ」や価格を変えずに内容量を減らす「実質値上げ」を含めると、5106品目。5月には700余りが、6月には「カップ麺」や「のり」など2390品目が値上げされるという。
こうした時流とまさに正反対の「なか卯」の値下げを、メディアはこぞって取り上げている。日本テレビ『news every』、TBS『THE TIME,』『ひるおび』『Nスタ』『news23』、フジテレビ『めざましテレビ』『Live News イット!』、テレビ朝日『スーパーJチャンネル』、さらに日本経済新聞、読売新聞など、大手メディアを軒並み「制覇」しているのだ。
思い出されるサイゼリヤの「値上げしない」宣言
メディアへの露出を増やそうとする際、「逆張り」は有効な作戦となる。記憶に新しいところでは、値上げラッシュが始まっていた2022年10月に、いち早く「値上げはしない」と宣言した「サイゼリヤ」だ。この「値上げしない宣言」を多くのメディアが報じた。
この「値上げしない宣言」の広告効果は、大きかったようだ。2022年9~11月期の連結決算で「サイゼリヤ」は前年同期の2億1900万円の赤字から約17億円の黒字に転換した。決算会見で、松谷秀治社長は「値段は上げないので、価格や品質ともにかなりの優位性が出ている」と語っている。
「サイゼリヤ」以上の「逆張り」といえば、「カフェ ラ・ボエム」「権八」などの飲食店を首都圏に展開する「グローバルダイニング」だろう。コロナ禍での東京都からの時短要請などには応じず、通常営業を続けた。さらに「時短命令は違法」だとして、東京都に対して損害賠償請求の訴えまで起こしたほどだ。
賛否分かれる判断ではあったが、「営業自粛」のあり方に一石を投じる動きを多くのメディアが取り上げた。この完全なる「逆張り」の結果だが、2021年1~3月期決算では前年同期の4億3000万円の赤字から1億7500万円の黒字となっている。私自身もこの時期、「グローバルダイニング」の運営する「権八」を訪れたのだが、普段以上の盛況ぶりに感心したものだ。
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