なか卯、卵高騰でも「親子丼40円値下げ」のカラクリ 経営への影響は?「逆張り戦略」の裏を読み解く

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そのような久しぶりのお客さんや新規のお客さんが増えてくれれば、この先、再訪店するお客さんも増えてきます。なか卯の親子丼を外食の基本ローテーションに加える顧客が増えれば、既存店売り上げは安定して増加することになります。広告宣伝費をかけるよりずっと大きなリターンが得られることになります。だから値下げ分のもとは十分に回収できるのです。

なか卯の戦略がこの宣伝効果を計算にいれていることは間違いありません。ちなみに戦略コンサルタントのミニ知識ですが、企業は戦略を隠すのが定石です。競争相手に知られると戦略の意義が半減するので「こんなことをやったらこんなに儲かりました」と公開するのは下策なのです。

値下げしたのは「親子丼」のみ

外部の視点でみれば今回の値下げが広告効果を狙ったものである証拠は実際にあります。というのも、値下げは看板商品だけなのです。

同じ親子丼カテゴリーでも、炭火焼親子丼は590円で価格据え置きですし、卵を使ったメニューとして、私が普段、なか卯で注文するカツ丼も590円のままです。さらにいえば、サイドオーダーの卵は80円。なんとなく高く感じますがこれもこれまでと同じ値段です。

ひとことで言えば「なか卯の親子丼40円値下げは相当に頑張っている」ということなのです。でもそこだけピンポイントで値下げをすることで大いに話題になるから値下げに踏み切った。そして実際に訪店してみて賑わいを確認してみると、その戦略の効果は確かにあったのだというのが私の認識です。

今回のニュースに限らず、びっくりするほどお得な商品の値下げ原資は「実は広告宣伝費だった」というものはたくさんあります。ペイペイを使うとびっくりするほど還元されるとか、中古車を買い取ってもらったらびっくりするほど高く買い取ってくれたとかもその一例です。

値上げラッシュの世の中ですから、こういった理由があって安い商品やサービスは積極的に使ったほうが生活防衛になると思います。安心して使ってみてください。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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