なか卯、卵高騰でも「親子丼40円値下げ」のカラクリ 経営への影響は?「逆張り戦略」の裏を読み解く

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報道によると、今回の鳥インフルエンザ騒動に関して、なか卯の契約農場はたまたま、その被害を受けずにすんでいるそうです。日本全体では採卵鶏の飼育数の1割を超える鶏が殺処分になるほどに鳥インフルエンザが広がっていて、そのため卵の数が不足しているのですが、なか卯は今のところ安定して卵が入ってきているというわけです。

契約農家も被害がなければ、契約価格で契約したとおりの数量をなか卯に納品しても、別に損をすることにはならないわけです。その意味ではなか卯の経営環境では、これまでどおり490円で親子丼を販売しても何ら困らない状況にあるというのが、まずもって前提条件ということになります。

しかし、なぜ値下げができるのでしょうか。

本当のことをいえば、お店を経営するための諸経費は値上がりしています。光熱費は折からの電気代高騰などで大幅にコスト増になっていますし、人手不足と政府の賃上げ政策で人件費も今後、じりじりと上がっていく環境にあるはずです。

経営環境全般でいえば、他の外食チェーン同様になか卯もコストアップを見据えた経営計画を立てるべき状況にあることは間違いないでしょう。

では親子丼1杯当たり40円の値下げの財源はどこから出ているのかというと、値下げによる客数増と生産性向上です。

すき家の「牛丼」での成功体験

メディアの報道をみると、値下げが始まった4月6日の朝からなか卯の店頭には値下がりした親子丼を食べにきたお客さんが並んで待っている姿が映されていました。

なか卯は外食大手のゼンショーホールディングスの傘下企業です。ゼンショーといえば牛丼のすき家で有名ですが、そのすき家もかつて同じ成功体験をもっています。それが牛丼戦争と呼ばれた値下げ合戦です。

すき家では2001年に看板メニューの牛丼並盛を290円に値下げしました。その後、いちどBSE騒動での販売中止などがあり再開後は350円で再スタートしましたが、リーマンショック後の2009年末にふたたび牛丼の価格は290円に引き下げられました。

当時はライバルの吉野家や松屋フーズも一斉に牛丼の価格を下げて対抗し、牛丼戦争と呼ばれました。それで何が起きたかというと牛丼店の客数が大幅に増えたのです。

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