なか卯、卵高騰でも「親子丼40円値下げ」のカラクリ 経営への影響は?「逆張り戦略」の裏を読み解く
実はこの牛丼戦争、お互いのお店から客を奪い合うのではなく、実際にはファミレスやコンビニのお客さんをすき家などの牛丼店が奪う構造が生まれていました。当時、コンビニで450円の弁当を買うよりもすき家で牛丼弁当を買ったほうが昼食は安上がりになるといわれたものです。
こうして客数が劇的に増えると牛丼のコストが下がります。なぜかというと牛丼の原材料費の部分は別に下がらないのですが、人件費や店舗の家賃や光熱費などいわゆる固定費部分のコストが「牛丼1杯当たり」に換算すると割安になるのです。計算してみるとわかりますがお店の賃料が1日2万円だとして1日500食なら1杯当たりの店舗コストが40円になるところを1000食なら20円ですむ計算です。
これが「生産性向上効果」で、要するに客数が増えればそれだけ親子丼は安く提供しても利益があがるようになるのです。
広告宣伝費も値下げの財源に
とはいえ、デフレ時代に牛丼1杯が290円になった衝撃と比べると、親子丼1杯が450円というのは客数増だけで値下げ額がカバーできるのかどうか微妙なところだと思います。
しかしこの値下げ戦略にはもう1つ、別の値下げ財源が存在します。なか卯の親子丼値下げによって、実質的には広告宣伝費が財源になるのです。
というのは、この卵高騰の時代に「卵をたっぷりと使ったうえに秘伝のタレが自慢の親子丼」が大幅値下げの450円になるというのは極めて珍しい経営判断で、ニュースバリューがあるのです。多くのニュースメディアが「値上げラッシュの世相の中で、一服の清涼剤のような気分が晴れるニュース」としてなか卯の値下げを取り上げてくれています。
その報道を広告宣伝費換算すれば何十億円もの広告効果があったことは間違いありません。さらにいえば、広告宣伝費の節約以上の効果があります。というのはこのニュースで多くの新規顧客が「一度食べてみようか」となか卯の店舗を訪問するからです。
どの飲食店にも看板商品はあるのですが、なか卯の場合は親子丼が圧倒的な看板メニューです。当然のことながらおいしいです。私事ですが、丼物の好物は牛丼とカツ丼で、親子丼は比較的たまにしか食べません。しかし今回のメニューで久しぶりになか卯を訪店して食べてみると確かにおいしい。そのおいしさを再認識しました。
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