任天堂創業家VS東洋建設「武力衝突」突入の緊迫感 友好的な協議が一転、激しいパンチの応酬に

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YFOも黙ってはいない。YFOの関係者はあきれ顔で次のように話す。

「昨年5月から何度も手を差し伸べて、対話をしてきたが、事務局では収束できず、10月からトップ会談に移行した。それでも、東洋建設の武澤社長は『YFOの買収により未上場化すると、会社が立ちゆかなくなる』の1点張りだった。もはや東洋建設の現任取締役会には、当社の買収提案の検討を期待していない」

このYFO関係者がとくに強調するのが、東洋建設にインフロニア・ホールディングスとの間で「密約」があったとする点だ。インフロニアは2022年3月から、持ち分法適用会社である東洋建設の完全子会社化を目指し、TOBを実施した(YFOの介入で、TOBは同5月に不成立)。

東洋建設はこのTOBに賛同を表明していた。この点について、YFO側は「東洋建設の役員がインフロニアへ経営参画する旨の密約が存在したにもかかわらず、これを意図的に開示せずに隠匿した疑惑がある」としている。

「東洋建設からは少なくとも1人が、インフロニアの役員として加わることが約束されていたと見られる。こういったことは、インフロニアによる公開買付届出書に記述しないといけない事項だ。インフロニアのTOB価格は770円と安かったが、武澤社長はポジションを確保した(保身に走った)と言わざるを得ない」(YFOの関係者)

YFOの関係者はさらに続ける。「東洋建設は、われわれの買収提案について取締役会で検討さえしてこなかった。これは当初不思議だったのだが、武澤社長がインフロニアの役員として入る密約があったのならば、東洋建設(武澤社長)がわれわれの提案を受け入れることはないだろう(と納得した)」。

YFOは東洋建設の一連の行動にガバナンスの瑕疵があるとして、独立の調査社による「全貌」の解明を求めている。

当面の焦点は6月の株主総会

対立の構図が鮮明化してきた両者。当面の焦点は、今年6月に予定される定時株主総会でYFOの株主提案が可決されるか否かである。この点について、YFO関係者は「(外国人投資家から多くの賛同を得られそうなことから)株主提案は否決されないと思っている」と語る。

仮に否決されても、「東洋建設の株式は持ち続ける」という(同)。アクティビストが率いるハゲタカファンドは、短期的に利益を出すことに注力する傾向がある。一方、YFOは任天堂創業家のファミリーオフィスのため、中長期的な視点で企業や事業を育成する投資を行っているので、今後も腰を据えて東洋建設の経営者と対峙していく構えだ。

「YFOは当社株をしばらく保有する可能性はある。しかし、なぜ当社にこだわるのか。もっと自分たちの得意な分野(先進的な技術を持つスタートアップなど)に投資したほうが有益ではないだろうか」と、東洋建設のベテラン社員はYFOの姿勢を訝しむ。

東洋建設はインフロニアが大株主であり、かつ商船三井とは洋上風力事業で協業する関係にある。こういった企業が東洋建設のホワイトナイトとなることも、可能性としてはあるだろう。

長期戦の様相を見せる任天堂創業家と東洋建設の攻防。この先、一波乱も二波乱もありそうだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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