任天堂創業家VS東洋建設「武力衝突」突入の緊迫感 友好的な協議が一転、激しいパンチの応酬に
東洋建設はYFOによる法令違反の疑いとして、主に下記の3点を指摘する。
1点目は金融商品取引法違反の疑いだ。2022年3月から5月にかけて行われた東洋建設株の買い付けにあたり、YFO側は当初、大量保有報告書などに保有目的として「純投資」と記載していた。4月中旬から保有目的を「純投資及び状況に応じて重要提案を行うこと」に変更したものの、「YFOは2022年5月に当社に対して買収を提案していることから、当初から経営権を取ることが目的だったことが容易に推測できる。記載に虚偽の疑いがある」と、東洋建設の宮﨑敦法務部長は指摘する。
2点目は外為法違反の疑いだ。外為法上では、外国人投資家が株式保有比率が10%を超える場合は事前届け出が必要だ。YFOはケイマン諸島の「WK1~3」を使って投資し、5月時点でYFOの株式保有比率は合計で27%を超過した。「WK1~3それぞれは10%未満の保有比率だが、本来は事前届け出が必要だったのではないか」(宮﨑法務部長)。
3点目は金融法(インサイダー取引規制)違反の疑いだ。東洋建設は2020年ごろ、シンガポール籍のアクティビストファンドと資本政策の検討に係るアドバイザリー業務委託契約を交わしていたが、このアクティビストファンドの担当者として、現YFOの最高投資責任者である村上皓亮氏が入っていた。
つまり、「村上氏は(YFOが東洋建設の株式を買い付けた時点で)一般株主が知り得ない情報について知っていた」(宮﨑法務部長)という。「これらの情報には、『業務等に関する重要事実』が含まれていた可能性がある」と宮﨑法務部長は述べる。
こうした主張に対し、YFOは3月28日付のリリースで「(指摘されている内容については)いずれの点についても、規制当局から当社らの行為に問題があるとの指摘を受けておりません」と反論。さらには、同リリースにおいて「極めて表層的な情報を報道機関に提供し、当社らの評判を落とそうとする印象操作」(*編集部で一部編集)とまで踏み込んで記述した。
東洋建設の新中計は「攻めの姿勢」が鮮明
東洋建設は関係当局への調査依頼に先駆けて、3月23日に2027年度を最終年度とする5カ年の中期経営計画を発表した。これまでは財務の健全性向上に経営の軸足を置いてきたが、今後は攻めの姿勢を鮮明にし、高収益モデルに転換することを強調。具体的には、海底ケーブル敷設船の建造(2027年度竣工計画)などによる洋上風力関連事業の開拓や、ケニアやインドネシアといった海外展開の強化を掲げた。
同社はさらに、“大盤振る舞い”の株主還元策まで打ち出した。これまで配当性向20~30%としてきたが、これを来2024年度から倍以上に拡大し、かつ「年間配当の下限を50円にする」とした。
年間配当50円という水準は、今2023年度の純利益計画(1株当たり純利益52.14円)に単純に当てはめると、配当性向が96%になる。時田執行役員は「仮に配当性向が100%になっても、(新中計の期間は)年間配当50円の下限は守っていく。株主さんに対して、いままでとは違う姿勢であることを強調していきたい」と語る。その後、東洋建設は4月4日に、2023年度から2025年度の3年間は配当性向を100%(下限50円)とすることを追加で公表した。
新中計の内容について、時田執行役員は「YFOへの対抗意識は働いていない」とする。だが、YFOが提示するTOB(株式公開買い付け)価格1000円よりも株価をつり上げて、買収を断念させたいという腹づもりがあることは間違いないだろう。これに株式市場も好反応し、東洋建設の株価は3月28日の場中に957円をつけた(2023年2月末終値886円)。
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