日本育ちで英語を身につけた人の「2つの共通点」 中学から勉強をスタートしても習得できた理由

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オレゴン大学を卒業した小此木さんも、高校2年の夏に訪れたアメリカでのサマーキャンプでの体験がアメリカの大学を目指すきっかけになりました。

「当時『ビバリーヒルズ青春白書』っていうドラマにハマっていて、その撮影場所の大学に行けるというので、ちょっと行ってみたいなぐらいの気持ちで参加しました。世界各地から同世代が集まって1カ月ほど一緒に過ごすプログラムだったのですが、日本人だけが会話の輪に入れてなかったんです。それを見て『ヤバいな』って思って。

将来、グローバル化が進んで、日本だけじゃなくて海外でも仕事をしなきゃいけなくなったときに、このまま日本で教育を受け続けてもダメだろうなぁと。実は英語がいちばん苦手で勉強したくなかった。でも交換留学くらいでは多分まともに身につかない。じゃあどうするのがいちばんいいかなって考えたら、自分はもうその環境に入るしかないと思ったんです」

海外から日本を客観視することで、これまで当たり前だと思っていた価値観が揺さぶられる。そして、日本の大学以外の選択肢があると気付くことは、10代という多感な時期には人生の転機になりうる体験といえるでしょう。

「動機づけが高い」人が持つ理想的なイメージ

TOEFLなど世界を土俵にした英語の試験でスコアを上げるには相応の努力が必要です。自分自身の中から湧き上がるモチベーションがなければ、高い目標に向かって地道な努力は続けられません。

スタートラインは、海外への憧れというポジティブな感情に限らず、危機感や失望感といったネガティブな感情であっても、たとえ英語が好きではなくてもいいのです。英語なしでは前に進めない、どうしても英語が必要だと感じる環境が、英語の勉強に向かわせる大きなモチベーションとなっているのは間違いありません。

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第2言語習得の専門家で、早稲田大学の原田哲男教授によると、最新の第2言語習得論では、こうした英語を学ぶうえでの「動機づけ」に関する研究が大きく進歩しているそうです。

「最近の動機づけ理論では、第2言語を使う理想的な自分を具体的にイメージできる学習者ほど、第2言語学習における動機づけが高いと考えられています。また、人のやる気というのは移ろうもので、英語を学ぶ長い道のりでは、試験などの義務感がないとやる気が出なかったり、思うような成果が得られずにまったくやる気をなくしてしまったりすることもたびたび起きるでしょう。

しかしそういうときでも、英語を使って『〜したい』『〜になりたい』といった理想的なイメージを持っていれば、学習に対するやる気が持続することが最近の研究からわかっています。

英語力の向上には、将来への具体的なイメージを持てるかどうか、それが本人の内面からの要求であるかどうかがとても重要なのです。

加藤 紀子 教育ジャーナリスト

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かとう のりこ / Noriko Katou

1973年京都市生まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は受験、英語教育、海外大学進学など、教育分野を中心にさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。2020年6月発売の初著書『子育てベスト100』はAmazon総合ランキング1位を獲得。17万部のベストセラー本となり、韓国、台湾、中国、タイ、ベトナムでも翻訳出版されている。

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