日本育ちで英語を身につけた人の「2つの共通点」 中学から勉強をスタートしても習得できた理由

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一方、習い事を通じて英語に早くから触れていた人にとっては、英語力そのものより、楽しい思い出や海外に対する憧れなど、習い事が英語に対するポジティブな動機づけになっていました。

新潟県の県立中高一貫校からカリフォルニア大学バークレー校を卒業した幸田優衣さんは、「小学校のときに家の近くにあったECCジュニアの教室は、自分にとって夢の世界だった。海外とは無縁の環境だったので、そこは初めての海外の文化との接点だった」といいます。

茨城県の県立高校からハーバード大学に在学中の松野さんも、5歳のときから週に1度、家の近くでアイルランド人が個人でやっている英会話教室に通っていましたが、「遊びに行っていただけで、英語はまったくと言っていいほど身につかなかった」と幼少期を振り返ります。

「でも、1つ本当によかったのは、英語は『楽しい』っていうことだけは体験できたんですよね。実は同じ時期に並行してそろばんにも通っていたのですが、先生がとても厳しく、それが怖くてめちゃくちゃ必死に頑張ったので、そろばんは英語と比べて圧倒的に上達したんですけど、楽しくないから嫌になっちゃったんです。だから何事も最初のつかみ、〝イントロ〞の部分で『楽しい記憶』が残るかどうかは一生響くんじゃないかと思います」

英語が好きではないという小学生は増加傾向に

つまり大事なのは、幼少期に英語嫌いになるような体験をさせないこと。英語力を身につけさせようと親や周りの大人が熱くなりすぎると、かえって英語嫌いを助長させる可能性があります。

今は2020年の学習指導要領の改訂で小学校3年生から学校で英語が始まり、5年生からは教科として成績も付くため、教員が「できたかできていないか」「正しいか否か」に焦点をあてすぎた指導をしたり、親がテストの結果に一喜一憂したりすると、子どもはあっという間にやる気を無くしてしまいかねません。

こうした背景からか、実際に、英語が好きではないという小学生は増加傾向にあります。文部科学省の全国学力・学習状況調査によると、「英語の学習(勉強)は好きですか?」という質問に対し、「そう思わない」と「どちらかといえば、そう思わない」と答えた小学校6年生が、2013年度の23.7%から21年度は31.5%と約8%も増えています。

第2言語習得の専門家である宮城教育大学の鈴木渉教授は、子どもの英語習得を促すには、保護者が子どもと一緒に英語の絵本を楽しむことを勧めています。保護者の読み聞かせは言語発達にいい影響を与えることはよく知られていますが、それが第2言語であっても、リーディング力が高くなることがわかっているそうです(『英語学習の科学』)。

小学校の英語であれば、親も一緒に楽しめるレベルです。できる・できないはいっさい気にせず、「子どもが楽しめているならそれで十分」と温かく見守ることが、英語嫌いにさせないコツといえるでしょう。

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