資本主義は「加速し続けるランニングマシン」だ 「交換価値」を求め続ける自己増殖システム

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資本主義は人々のニーズを満たすことが目的のシステムではなく、ひたすら交換価値を求め続けるシステムです(写真:USSIE/PIXTA)
環境破壊、不平等、貧困……今、世界中で多くの人々が、資本主義が抱える問題に気づき始めている。
経済人類学者のジェイソン・ヒッケル氏によれば、資本主義は自然や身体をモノと見なして「外部化」し、搾取することで成立している、「ニーズを満たさないことを目的としたシステム」であるという。
そしてヒッケルは、「アニミズム対二元論」というユニークな視点で、資本主義の歴史とそれが内包する問題を白日の下にさらし、今後、私たちが目指すべき「成長に依存しない世界」を提示する。
今回、日本語版が4月に刊行された『資本主義の次に来る世界』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

資本主義に対する誤謬

『資本主義の次に来る世界』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

数か月前、わたしは生放送されるテレビ討論会のステージにいた。テーマは資本主義の未来だ。観客(オーディエンス)が注視する中、論敵は立ち上がってこう言った。――資本主義自体には、問題はまったくない。問題は、強欲なCEOと金で動く政治家のせいで資本主義が腐敗していることだ。わたしたちがすべきことは腐ったリンゴを取り除くことだ。そうすれば、すべてうまくいく。

資本主義とは、突き詰めれば市場で物を売り買いしている人々のことだ。地元のファーマーズマーケットであれ、モロッコの青空市場(スーク)であれ、彼らは、自分の技能を活かして生計を立てている罪なき人々だ。それのどこが間違っていると言うのか?

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