敵と味方を明確にしない人が結局は損する理由 「安全策ばかり選べる」などと思ってはいけない

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ケンカ
『君主論』の目線から考えます(写真:サイクロン/PIXTA)
尊敬されるリーダーは何をすべきか。その答えが500年前に書かれた組織論の指南書『君主論』に克明に記されています。人心掌握のツボを、『すらすら読める新訳 君主論』から抜粋して紹介します。

君主が尊敬されるための条件

君主が尊敬されるためには、何より大事業を行い、自らが手本を示すことだ。スペイン王であるアラゴン家のフェルナンドが例として挙げられる。

弱小国の君主にすぎなかったフェルナンドは、名声と栄光を得ることでキリスト教国きっての国王になった。フェルナンドの行動を見ると、どれもスケールが大きく桁はずれだ。

即位するとすぐにグラナダを攻撃したが、この企てが王国の基礎をつくった。彼は、最初は控えめにことを進めることで、疑われて妨害が入らないようにした。そして、カスティーリャ(イベリア半島中央部)の封建領主たちがこの戦争に気を取られて、国内で反乱を起こすことなど考えつかないようにしたのだ。その間に、フェルナンドは、彼らが気づかないうちに名声を得て、実権を握ってしまった。

また、ローマ教会の財力と民衆の金で軍隊を養ったので、この長い戦争を通して自らの軍隊の基盤を固めることができ、その軍事力がのちに彼の栄光を高めた。さらに大きな事業に着手できるよう、宗教を利用して狂信的な残虐行為を行い、マッラーニ(やむなくキリスト教に改宗したユダヤ人)たちを追放し、その財産を略奪した。続いて同じ口実のもとにアフリカを攻め、イタリアで軍事作戦を行い、ついにはフランスも攻撃した。

このように彼はつねに大きな事業を計画しては実行していった。そのたびに臣民は興奮し、感嘆し、彼の成功に夢中になった。こうした行動は、人々が冷静になって対抗策を考えつく余裕を与えないよう、次々と矢継ぎ早に行われた。

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