とくに日頃信仰心がなくても、初詣や葬儀で神仏に手を合わせ、厄年になれば「厄除けやっておこうかな」と考える人は多いだろう。一方で、「お金も時間ももったいない」と考えて合格祈願や健康祈願などしたことがないという人もいる。なぜ祈る人と祈らない人がいるのだろうか。
そうした人間行動を、心理学と経済学を融合した行動経済学の考え方で分析した『お寺の行動経済学』が刊行された。著者の中島隆信氏が書籍でも紹介した「私たちはなぜ祈るのか」について論じる。
私たちはなぜ祈るのか?
「祈り」は私たちにとってとても身近な活動である。初詣や葬儀では神仏の前で手を合わせる。また、合格祈願や健康祈願で絵馬を掛けたり、祈願札や縁起物の熊手を飾ったりする。
にもかかわらず、なぜ祈るのかその理由を尋ねられると明確な答えは返ってこない。「そうするのが習慣だから」とか「願いをかなえたいから」といった感じなのだ。すべてを合理的に説明したがる経済学者としては、到底納得できる答えではない。
なぜなら、成果が得られるかどうか科学的な根拠の見えにくい祈りに時間とカネを費やすならば、確実に成果が期待できる行動にそれを振り向けたほうが得策と思えるからだ。すなわち、合格祈願や健康祈願をするのではなく、勉学やヘルスケアに励むべきだろう。
ところが、これだけ科学が進歩した現代社会に暮らしていながら、私たちが祈りをやめることはない。そうだとしたら、経済的な合理性以外にその原因を求めなければならない。そこで役に立つのが心理学と経済学の融合として近年認知度が高まっている行動経済学の考え方である。
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