特殊詐欺の「共犯者」にされかかった男の深い後悔 友人を助けたつもりが逮捕が待っていた
妻は何日かに分け、マンション周辺を調査した。不審な車や人がいないか、監視カメラが設置されていないかを調べたが、不審な点は見つからなかった。
程なく、Xから再び依頼が来る。「後輩が引っ越しをしたがっている。もう1回、名義を貸してもらえませんか」
AはBと相談したうえで再び名義貸しをして、世田谷区の別のマンションを借りてやった。引っ越し当日、Xから「尾行する車がないか見張っていてほしい」と頼まれ、Aの妻が車で尾行がないかを探った。この日、尾行車両は確認できなかった。
半年後に事態が急変
ところが、それから半年が経過した2022年6月、事態が急変する。警視庁がマンションの強制捜査に入ったのだ。部屋の中では、2人の男が還付金詐欺の「かけ子」をしていた。
かけ子は市役所職員などを装い、奈良県の67歳の女性に電話をかけ、「介護保険料の還付金3万6000円が返還される」「申請書類がなくても受け取る手続きができる」などと言い、ATMで、犯人グループの口座に現金100万円を振り込ませていた。
グループの中で捕まったのは2人だけではない。宮崎県の女性に「健康保険の過払い金がある。今日手続きしないと返金できなくなる」などと虚偽の電話をかけ130万円をだまし取った還付金詐欺の容疑が浮かび、今年1月、集金部隊の指示役である指定暴力団・住吉会傘下の組員も逮捕された。
このグループによる詐欺行為は世田谷区のマンションが重要な拠点になっていた。捜査が進む中、自分たちも犯罪に加担していたと見なされるのではないかと懸念したAがXに問いただすと、「不動産のことはこっちで処理するから大丈夫」と言い張られた。
だが不安は的中する。警視庁は昨年10月、Bを逮捕。続けてAを11月に逮捕した。警察は名義貸しをしたAとBを詐欺グループの一味と判断したのだ。身の危険を感じたXは姿をくらました。
その後の捜査で、この詐欺グループが関与した特殊詐欺は100件ほどあり、被害総額は1億円に及んだことが確認されている。
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