特殊詐欺の「共犯者」にされかかった男の深い後悔 友人を助けたつもりが逮捕が待っていた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
東京拘置所の外観
Aが勾留されていた東京拘置所(記者撮影)
「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺の被害に遭うのは、大半が高齢者だ。なぜ高齢者が狙われるのか。4月3日発売の『週刊東洋経済』の特集「狙われる高齢者 喰い尽くされる親のカネ」では、高齢者が詐欺や悪徳商法に狙われる社会的構造と、加害者たちの実像に迫った。親の資産防衛マニュアルも収録。家族を被害から守るための完全保存版だ。(この記事は本特集内にも収録しています)

東京都葛飾区の小菅にある東京拘置所。3月上旬、面会室で取材に応じたAは、「こんなことになるとわかっていたら、あんな相談には乗らなかった」と、悔しそうな表情を見せた。

昨年11月、妻と共に探偵事務所を営むAは、警視庁暴力団対策課によって逮捕された。容疑は電子計算機使用詐欺と窃盗。特殊詐欺の共犯者と見なされたのだ。

週刊東洋経済 2023年4/8号[雑誌](狙われる高齢者)
4月3日発売の『週刊東洋経済 2023年4/8号』の1特集は「狙われる高齢者 喰い尽くされる親のカネ」。アマゾンでの購入はこちら

発端は2021年4月、友人であるXから相談を受けたことだった。

「自分の後輩が部屋を借りようとしたが、審査に通らなかった。住む所がなく、困っている。代わりに契約してもらえないか」

Xはかつて指定暴力団・六代目山口組の傘下組織に属していたが、「足を洗った」と話していた。

Aは、Xの後輩だという男が組員であるかは確認しなかったが、「Xは組を脱退していたので、その後輩も一般人だと思った。友人の頼みだし、何とかしてやろうと考えた」と振り返る。暴力団対策法によって、現役の組員は不動産を借りられない。

Aは部下であるBに指示し、Bが代表を務める会社の名義で部屋を借りることを決める。Aは名義貸しが違法であることはわかっていたが、「何も問題が起きなければ表面化することはない」と考え、世田谷区のマンションの一室を借りた。

その際AはXと2つの約束をした。居住用として使うこと、そして犯罪には使わないことだ。

「見張られている」

だが半年ほど経った2021年秋、AはXから奇妙な連絡を受ける。「マンションが何者かに見張られている気がする。Aさんの探偵事務所で調べてほしい」

実際に調査するAの妻がいぶかしんでXに尋ねた。「見張られているってどういうことですか? (相手は)暴力団?」。Xは「後輩は金銭トラブルを抱えて関西から逃げてきている。債権者かもしれないし、暴力団の可能性もある」と返答した。

次ページ警視庁がマンションの強制捜査に
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事